筆石村

作品名よみふでしむら
作品名(欧文)The Fudeshi Village
作者須田国太郎
種別油彩画
受入番号744
枝番号0
分類番号O-065
員数1
形状額装
寸法(cm)97.0×145.5
材質キャンヴァス、油彩
材質英文Oil on canvas
制作年(西暦)1938
制作年(和暦)昭和13
発表展第3回京都市展
開催年1938
受入年度(西暦)1985
受入年度(和暦)S60
受入方法購入
キーワード風景
解説須田の風景画では、つねに近景と遠景の二元的対立が作画のコンセプトになっている。前景は動きを孕んだ闇であり、後景には光を浴びた静止的な対象構成がある。丹後半島の乗原から筆石村の棚田を俯敢した本作でも、前方では影をかぶって赤茶色の泥が流れ、かなたには整合的に構成された、明るい家並と山並みが遠望されている。1937(昭和12)年12月に須田は北丹後に旅し、小書や寒風を冒して25号の写生画≪時雨(筆石村)≫を描いた。当館所蔵の80号は、翌年2月から4月にかけて画室で再構成され、第3回京都市展に出品されたものである。両作ともモティーフ構成は同じだが、本図では雨の方向が反転し、中景の家並がさらに整えられ、かつ画面は横長に延び、右下に向う25号の写生画の方向とは逆に、右上への方向線をきわだてる。こうして悠遠な自然のうねりが巧みに捉えられていくのである。ところで近景と遠景の二元的対峠という制作の手法は、作者が自己と描かれるべき対象との間に、ストイックな距離の意識を前提していたことを示している。一方日本的な伝統からすれば、自然対象は情緒的・直観的に、つまり一元的に作者と融和する筈のものであった。謡曲趣味に秀で、水墨画もよくした須田は、明らかに直観的な対象把握の資質を有していたが、彼の研究課題であり続けた西欧のリアリズムは、描く自己と描写対象との、一定の距離を介した対峠を原則としていた。したがって対象に肉薄するために、須田の二つながら秀でた理知と情緒とが、制作に際して緊張に充ちた葛藤を始める。そして、その文化史的な意味さえ荷う葛藤の深さが、同時に須田芸術の深さになっている。なお1996(平成8)年に静岡県立美術館で、本作の解明を通じて須田芸術の意味を問う、「検証・須田国太郎の“筆石村”」展が開催された。

1996年『静岡県立美術館コレクション選』、p. 114

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