富士

作品名よみふじ
作品名(欧文)Mt. Fuji
作者五姓田義松
種別油彩画
受入番号660
枝番号0
分類番号O-053
員数1
形状額装
寸法(cm)46.8×101.5
材質キャンヴァス、油彩
材質英文Oil on canvas
制作年(西暦)1905
制作年(和暦)明治38
記銘、年紀(左下)明治三十八年十二月 五姓田義松寫
受入年度(西暦)1983
受入年度(和暦)S58
受入方法購入
キーワード風景、富士山
解説本図は日本平の東の麓より三保松原、駿河湾をとおして富士を遠望した図である。左端あたりに清水港、その沖に蒸気船が見え、湾内には白帆をあげた舟が多く浮かんでいる。対岸の興津や薩埵(さった)峠も指呼の間にある。この景勝の地は昔より有名であり、室町時代の伝雪舟≪富士三保松原図≫が残されているのをはじめ、探幽も江漢もこの地を訪れた。また滝沢馬琴はこの地からみる富士を絶賛している(「玄同放言」)。義松が同地を訪れたのは1903(明治36)年、すなわち残された日記によれば、(月不明)「四日晴(中略)束海江尻駅ニテ下車シ直二腕車二打乗清水港ヨリ富士見村ヘ赴キ鹿島氏所有ノ岡ヨリ富岳及ヒ三保ノ全景ヲ写シ浦水二帰り梅本ヘ一泊ス/五日早朝ヨリ前期ノ場所ヘ徒歩シ前日写懸ノ写生ヲ終リ江尻ヘ帰リ午後六時二十過ノ汽車ニテ(後略)」とあり、たっぷり2日かけて丹念にこの地から見える風景を写し取ったのがわかる。その結実が茨城県立美術博物館蔵の≪富士遠望図≫(明治36)であり、本図である。技術的には全く破綻のない、完壁な図であり、空気遠近法にも意を用い、畑や森、海と陸地、雲と空の諧調が美しく溶け合う。 横長の画面は彼がパノラマ画に興味を持っていた痕跡を示すものであろうか。性狷介といわれた義松が晩年にみせた日本画回帰がここに表れているとみてよいが、いやみのない恬淡としたそのテクニックはむしろ彼の持っている諦念をひそかに伝えるもののように思われる。義松の芸術埋解には欠かせない一図といえよう。

1996年『静岡県立美術館コレクション選』、p. 100

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