朝日新聞 昭和23年6月24日

二大疑獄事件

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解説 敗戦後の昭和二十年代に相次いだ二大疑獄事件(「昭電疑獄」と「造船疑獄」)は、政治家と、利権を獲得し拡大しようとする経済界の巨頭たちの、カネと利権とをチップに積んだポーカーであった。相手の肚の内と自分の欲望とを天秤にかけて、差しでカードを引いてゆく。ところが、巨大な機関がプレイヤーそのものを手駒にしたとき、ルールは一変してしまった。
 昭和23(1948)年に発覚した「昭電疑獄」は、昭和電工再建を目指した日野原節三社長が、復興金融金庫から巨額の融資を得るため、政官界に多額の贈賄工作を行ったものである。ところが、GHQ内部のG2(参謀部第二部・作戦部)とGS(民政局)との権力闘争が激化し、G2は、日野原と結びついたGSを追い落とすために、昭電疑獄をスキャンダルとして利用した。
 昭和29(1954)年に発覚した「造船疑獄」では、造船業界から政・官界へ多額の賄賂が贈られ、事件の鍵を握るとみられる自由党幹事長・佐藤栄作に逮捕状が請求されるに至った。しかし、法務大臣犬養健の検事総長への指揮権発動によって逮捕は阻止され、事件の大半は闇に葬られることとなった。造船疑獄の場合、造船業界と政・官界のゲームに「森脇メモ」を持って乗り込んできたのは、高利貸し森脇将光という政界にも財界にも容れられない怪人物だった。
作品名日本の黒い霧

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