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源氏物語図色紙(須磨)

資料番号2012-001
資料名源氏物語図色紙(須磨)
著者・作者土佐光吉
員数1面
制作年代桃山時代
解説源氏物語の第12帖「須磨」から、源氏が須磨の寓居で桜を眺めながら京に思いを馳せているところに、京から親友の頭中将が訪ねてくる場面が描かれる。裏面には「土佐久翌」の墨文重廓円印が押され、久翌と号した土佐光吉(1539~1613)の作であることを示す。
土佐派は、室町時代以来、宮廷の絵所預をつとめたが、永禄12年(1569)、棟梁・土佐光茂の嫡男である光元が戦死したことにより転機を迎えた。光茂は弟子の光吉に工房を任せ、光吉は京都から堺に活動の場を移した。光吉は複数の絵師たちによる工房の主宰者として、堺衆の肖像画や源氏絵などを制作していたと考えられる。
金箔をふんだんに使った濃彩の源氏絵は、光吉工房の主力作品であった。本作と同じ印の押された光吉の著名な作として、亡くなる前年の慶長17年(1612)制作の「源氏物語手鑑」(和泉市久保惣記念美術館蔵 重要文化財)や同じく晩年の作とみなされる「源氏物語図色紙帖」(京都国立博物館蔵 重要文化財)がある。両作の中の「須磨」の図と、本図は構図やモチーフが近似し、人物の造形や細緻に描かれた衣装の文様、桜や岩の描法等共通する。本作も両作と同様、慶長年間後期の光吉晩年の制作になるのだろう。しかし、両作中の「須磨」の図と比較すると、構図の緊密さがやや失われている感がある。細長い形の霞が配置されるのも特徴的である。「土佐久翌」印の押されたものにも、わずかではあるが表現に幅があることがわかり、複数の絵師で運営された土佐光吉工房の活動の様相を伝える好資料である。

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