漆塗太鼓形酒筒

資料番号1983-027
資料名漆塗太鼓形酒筒
指定重要文化財
員数1基
制作年代文明5年6月
解説太鼓の形をした酒筒は、鎌倉時代以降の絵巻物の酒宴の場面にしばしば描かれている。手で持ち運びできる小形のものが多い。本品のような大きな作例は他に類がなく、現存酒筒中最大の遺品である。胴回りは透漆を塗って肌理を生かし、両端を少し彫り下げて黒漆を塗っている。鼓面は黒漆地に朱漆で剣巴文が描かれている。頂部は口縁に黒漆が塗られ、筒形注口を模した蓋が鉄製懸金具で止められるようになっている。蓋は三重菊座に各面を黒と朱の漆で塗り分けた切子頭付栓を一体とした細工になっており、菊座の一重目を捩花形とするなど手のこんだ仕上げである。台は刳形台で黒漆が塗られ、浅く彫られた猪目の部分のみ朱漆が塗られている。胴底部に次の刻銘がある。
  「奉寄進施主四十九院角坊権律師行盛
   金□(罡に寸、剛)峯寺下山天野山王院長床之酒筒
   文明第五天癸巳六月吉日細工四良次良
               塗士次良五良」
 すなわち、本作は、高野山の鎮守天野社(現丹生都比売神社・和歌山県)の神宮寺であった山王院長床の常備の酒筒として寄進されたものである。寄進者・細工師・塗師の明らかな器物として貴重な遺品といえる。なお口縁の黒漆塗部に「玉光」という刻銘があるが、これは後世の落書であろう。
(なお本品は、従来「巴文漆絵太鼓樽」と称していたものである)(『堺市博物館優品図録』より)

『堺市博物館優品図録』『羅漢・役行者・行基ー山の修行者の系譜ー』に掲載

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