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奈良県の牛耕用具 C-Ⅰ ① 飼葉入れ、② 押切り

指定名称奈良県の牛耕用具
指定分類番号02-01-C-Ⅰ-①
点数1
資料解説 牛にとっても、健康を保ち、全てのエネルギーの源となる食事は重要です。牛は餌を食べたあと1時間ほどは反芻するので、その間は作業はさせません。
 牛の給餌は1日3回行われ、これに使用する器が飼葉入れです。藁を押切で刻んで飼葉桶に落とし入れ、これに米のとぎ汁5~6升ほどを沸かしたもの(マゼユ、ゾウズ)をかけたもの、これにフスマ(小麦を挽いたときにできる皮屑)や米糠を混ぜると大変喜んで食べたといいます。また、麦と小米1升ずつ、その他藁屑、ドロイモやジャガイモなどを一緒に炊き、糠も入れて与えたとも聞きます。さらに耕起作業が始まる前には、体力をつけさせるため、さらに裸麦を炊いたり、みそ汁を与えたりすることもありました。
 押切は、牛を飼育している家にとって、藁や干し草などを切る道具として必需品でした。飼葉桶の上に押切の台を渡すようにおいて、6~7把の藁を2、3㎝に刻んで飼葉桶に落とし入れます。手加減で藁を押し出しては一息にザク、ザクっと切っていくので、油断すると指を切る危険があり、親からよく注意されたものだといいます。

資料説明詳細飼葉入れ(かいばいれ)、押切り(おしぎり)
 県指定分類(C)牛耕に使う牛の世話をする道具類 (Ⅰ)牛に餌を与える道具 
 ①飼葉入れ 県指定分類NO.3111、3112  4点のうち
 一般に「飼葉桶(かいばおけ)」と呼ばれる円筒桶タイプ(右)3点と、木をくり抜いたり、板材を組み合わせて作る舟型のもの(左)1点があります。
 このほか、少し離れた場所で作業をする場合には、外での給餌用に小型の桶を使う人もいました。

 ②押切 県指定分類NO.3121、3122  16点のうち
 押切には、第Ⅰ類:台木に大型の包丁の刃を上向きに固定するもの(押金式押切)と、第Ⅱ類:台木に受刃を固定して包丁を下して切るもの(受金式押切)の2つのタイプがありますが、1点(写真手前 収蔵番号:9917470)を除いて第Ⅰ類です。片手に藁や草などの材料を持ち、包丁と受刃の間に置いて、もう一方の手で把手を下げて切りますが、このとき把手を向こうに押し倒して切る使い方と、支点を向こうにおいて、把手を手前に倒して切る使い方があります。

 
 
参考文献岩宮隆司『奈良県の牛耕用具』概要説明(県教委提出資料「資料4」及び草稿)2007年
岩宮隆司「奈良市疋田町から収集した民具についてー牛耕を中心にー」(『奈良県立民俗博物館だより』通巻92・93合併号2004年)
岩宮隆司「県指定有形民俗文化財「奈良県の牛耕用具」の概略」(『奈良県立民俗館だより』通巻99号 2007年)
『国際常民文化研究叢書6-民具の名称に関する基礎的研究-[民具名称一覧編]』神奈川大学国際常民文化研究機構 2014年
浦西勉「牛耕についての聞き書きー生駒市南田原ー」(『奈良県立民俗博物館だより』通巻56号)
指定文化財総説奈良県指定有形民俗文化財「奈良県の牛耕用具」(平成19年3月指定)
 奈良県の農耕用具のうち、牛を利用して田畑を耕作する民俗資料群544点。①牛耕時に牛に牽引させる農具類(327点)、②牛耕時に牛に装着する道具類点)、③牛耕に使う牛の世話をする道具類(31点)からなる。
 使用年代は江戸時代末期~昭和前期、奈良県が稲作の反あたりの収穫量が全国トップクラスであった時期にあたる。収集地域は、奈良盆地を中心に奈良県全域にわたり網羅されており、奈良県の農耕技術の具体的な実態と変遷及び地域的特色をよく示している。 
備考個々の資料については、収蔵品データベースに掲載あり

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