奈良県の牛耕用具 A-Ⅳ‐① 除草機
指定名称 | 奈良県の牛耕用具 |
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指定分類番号 | 02-01-A-Ⅳ‐① |
点数 | 1 |
資料解説 | 牛に牽かせて水田の中耕除草を行う道具です。 中耕除草とは、畦や株の間を浅く耕し、雑草を除き、土をやわらげて通気性をよくすることによって作物の生育を助けるものです。手と補助的に使う鉄爪、雁爪、田かじ鍬などで、水田に分け入って行う単調な作業は、田植え後10日目頃から始まり、盆前まで毎週のように繰り返され、極暑期には辛いものでした。 明治末期に、人力用の耕除草機が使用されるようになって作業姿勢が改善され、作業効率が向上しました。畜力用除草機は、この人力用の中耕除草機を基本として開発されたものです。 |
資料説明詳細 | 除草機(じょそうき) (A)牛に牽引させる道具 (Ⅳ)耕土を管理する道具① 2点 牛に装着した牽引具に連結し、牛が前進すると、除草機の歯車が回転して雑草を倒しつつ、土をかき混ぜる仕組みです。形状から、前側に並んだ3つの歯車の中で、中央は幅が広く、左右は幅が狭くなっているもの(第Ⅰ類)と、前側に並んだ3つの転車の幅が全て同じもの(第Ⅱ類)に分けています。第Ⅰ類(写真右/収蔵番号:9904627)は、寄せ畦植えに対応したもの、第Ⅱ類(写真左/収蔵番号:2000017)は、並木植えに対応したものです。 畜力用除草機は、人力用の中耕除草機をもとに開発されたものですが、これを使うためには牛馬の通路を確保する必要があり、単位面積あたりの株数を減らさないよう、通路の拡張分を確保しつつ、その分左右の畦を移動し、幅を狭める「寄せ畦植え」を行う必要がありました。しかし、これでは田植え作業が煩雑になるため、全ての畦幅を通路と同じように拡張するかわりに株間をその分だけ縮める「並木植え」が行われるようになりました。 そのため、初期の寄せ畦用畜力除草機は、牛馬の通り道を通る中央の歯車は幅が広く、寄せられた畦を通る車の幅は狭くなっていましたが、並木植え用では、同一寸法の歯車となっています。 どちらも歯車は、2列になっていて、後列の歯車は、前列と同幅の中に内向対称の二つの歯車がつく構造になっています。土の撹拌性がよく、反転性も優れており、前列の車との相互作用によってより効果を上げるための工夫と思われます。 |
参考文献 | 河野通明『日本農耕具史の基礎的研究』和泉書院 1994年 岩宮隆司『奈良県の牛耕用具』概要説明(県教委提出資料「資料4」及び草稿)2007年 『国際常民文化研究叢書6-民具の名称に関する基礎的研究-[民具名称一覧編]』神奈川大学国際常民文化研究機構 2014年 |
指定文化財総説 | 奈良県指定有形民俗文化財「奈良県の牛耕用具」(平成19年3月指定) 奈良県の農耕用具のうち、牛を利用して田畑を耕作する民俗資料群544点。①牛耕時に牛に牽引させる農具類(327点)、②牛耕時に牛に装着する道具類点)、③牛耕に使う牛の世話をする道具類(31点)からなる。 使用年代は江戸時代末期~昭和前期、奈良県が稲作の反あたりの収穫量が全国トップクラスであった時期にあたる。収集地域は、奈良盆地を中心に奈良県全域にわたり網羅されており、奈良県の農耕技術の具体的な実態と変遷及び地域的特色をよく示している。 |
備考 | 個々の資料については、収蔵品データベースに掲載あり |