フェルナンド7世の肖像
| Title | Portrait of Ferdinand VII |
|---|---|
| 作者 | ルイス・デ・ラ・クルス・イ・リオス |
| Artist | Luis de la CRUZ Y RÍOS |
| 制作年 Year | 1828年 |
| 素材・技法 | 油彩・カンヴァス |
| Materials/techniques | Oil on canvas |
| サイズ Size | 250×166.5cm |
| コレクション等 | 須磨コレクション |
| 解説・読み下し | フェルナンド7世(1748-1833;在位 1808, 1814-1833)は、1808年3月に勃発したアランフエスでの暴動の結果、父王カルロス4世に代わり即位した。しかし、その後に当時スペイン内で影響力を強めていたナポレオンの策謀により退位を余儀なくされ、フランスのロワール渓谷にあるヴァランセ宮に幽閉される。対フランス独立戦争(1808-1814)の終結後にスペインへ帰還し、再び王位に就いて専制君主制に基づく統治を確立していった。その治世下で実施された文化政策としては第一に、1819年のプラド美術館の開館が挙げられる。この王はまた、古典古代に範を置き、荘厳かつ秩序だった理想主義的表現を特徴とする新古典主義芸術を好んだ。ルイス・デ・ラ・クルス・イ・リオスは既に宮廷で活躍していたビセンテ・ロペス(1772-1850)らの影響下で同様式に基づく肖像画を多く制作した。 この画家の代表作の一つに数えられる本作の画中には王権にまつわる表象が散りばめられている。堂々とした帯剣姿のフェルナンド7世がまとうのは、白貂の毛皮を用い、金色の刺繍で飾られた深紅の儀式服だ。左手には白い羽飾りを贅沢にあしらった赤地の帽子を、右手には金色の王笏を持つ——その後ろにはブルボン家の王冠が描かれた。胸元には王権の象徴である金羊毛勲章とカルロス3世勲章が光っている。後者の首飾りには、それぞれカスティーリャ王国とレオン王国のシンボルである城塞と獅子を象った装飾がある。同様の飾りは王笏にも見出せるが、そこではブルボン家を示す百合の花の文様も加えられた。さらに同王がイギリスのガーター勲章を授与されたことを示すべく、白の靴下を留めるガーターには「AL Y PENSE」の文字が記された。それは同勲章の古フランス語の標語「悪意あるものに災いあれ(Honi soit qui mal y pense)」の一部だ1)。フェルナンド7世の後ろに描かれた豪奢な玉座の背には王の名を示す「F7」のモノグラムが施されている。 なお本作の表現上の源泉として、フランスの画家アントワーヌ=フランソワ・カレ(1741-1823)が1778-1779年頃に描いた《ルイ16世の肖像》(プラド美術館、マドリード)が挙げられてきた2)。寸法や構図が近似し、モデルである王の姿勢と持物にも共通点を持つ。(『長崎県美術館コレクション選』2025年、32頁) 1) Jesús Hernández Perera, “Los retratos reales de Luis de la Cruz y Rios,” Anuario de Estudios Atlánticos, 1955, n.1, p.237. 2) メルセデス・アゲダ・ビリャール「須磨コレクションの調査報告書(一)」楠根圭子、小倉康之訳『長崎県美術館研究紀要』No.2、2009年、p.51. |
