民話「こわしみず」

資料ID3912
中分類伝承
小分類民話・昔話
資料名民話「こわしみず」
資料名(よみ)みんわ「こわしみず」
解説 むかし、むかしのお話です。
 日本の国は、鎌倉が中心でしたので、鎌倉みちというのが、いろいろな所にありました。
 新座市の中にも、今の大和田の普光明寺より西浦を通って清瀬市の下宿に向かう道が鎌倉みちと言われておりました。この道すじには、三本木という普光明寺の墓地もありました。そしてこのあたりは、大和田の宿から見ると畑と野原が一面続いておりました。
 この鎌倉みちには、大和田と清瀬市の下宿の境あたりに「こわしみず」と言われた所があります。(正確には、清瀬市かも知れません。今は、武蔵野線が通っています。)そこは、こんもりと樹々が生い茂り、きれいな清水がわきだしている泉がありました。
 当時、人々は、この場所を「しみずさま」と呼んでいました。
 いつの頃かわかりませんが、大和田の宿の近い所に、「二本杉」という所があり、そこには大きな二本の杉の木が立っていたそうです。その近くに、両親と男の子の三人の親子が住んでいる小さな貧しい農家が一軒、建っておりました。
 父親は、お酒が大変好きで、毎晩、お酒を飲まないと気がすまないくらいでした。けれども、家が貧しいため、お酒を買うことができませんでした。お酒がないと、母親と子供に「酒がない、酒を早く買ってこい。」と言っては、大きな声でどなりちらします。
 ある日のこと、同じ様に「酒がない。」とわめきちらし、母親を困らせておりました。これを聞いていた子供は、大変親思いでしたので、母親が困りはてているのを見て、とっくりを持って外へとび出しました。けれども、お金がないので、お酒を買うことができません。そこでいろいろと考え歩いているうちに、「しみずさま」の所まで来てしまいました。
 そこには、きれいな泉がこんこんとわき出ておりました。子供は、思わずこのきれいな泉の水をとっくりにつめてしまいました。そしてこれを家に持ち帰りました。家に帰った子供は、父親に「おとっつあん、お酒を買って来たよ。」と、そのとっくりを差し出しました。父親は、たいそう喜んでそれをおいしそうに飲み出しました。
 すると、どうしたことでしょう。
なんと不思議、不思議、ただの水なのに、父親は、「こんなうまい酒はない。」と言って、喜んでなんばいもなんばいも飲みました。飲むほどに酔いがまわり、とても気持ちよさそうに寝てしまいました。次の日も次の日も同じ様なことが起こりましたが、子供は、「しみずさま」から泉の水をとっくりにくんで来ました。不思議に思った母親が子供の後をつけて行きました。すると「しみずさま」の水をくんでいるではありませんか。母親が、口にふくんでみましたが、母親には、何の変わりもない水でした。ところが、父親が飲むとたちまち、この水が上等のお酒になってしまうのです。もちろん、子供にもただの水なのです。
 母親の話がこの村人達に知れわたりましたが、村人達の中には、誰一人として、お酒に変わった人は、おりませんでした。それからは、「親にきき酒、こはしみず。」ということばが、伝えられ、この泉のことを「こわしみず」と呼ばれる様になりました。
 働き者のむすこが、親孝行をしたので泉の水が、おいしいお酒に変わったのかも知れません。
解説引用『にいざの民話』新座民話の会、昭和60年(1985)
エリア大和田

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