大堰川図蒔絵硯箱

資料ID524
中分類工芸
小分類漆工
法量1点 幅21.0奥行23.0高5.4
制作年江戸時代(19世紀)
作者名A不詳
作者情報清水九兵衛【?~1688年(~元禄元】
 清水九兵衛については確かな伝記は残っていないが、京都の生家は代々前田家の呉服御用を務めた家柄であると伝えられる。号を柳景という。蒔絵をよくした九兵衛は、加賀藩三代藩主前田利常に招かれた。金沢には、蒔絵師として足利義政に仕えた家系の五十嵐道甫が同じく前田家によって先に招かれており、この五十嵐道甫とともに金沢で加賀蒔絵の基礎を築いた。
資料解説長方形、入隅形、被蓋造りの硯箱。蓋は甲盛と胴張りを有し、蓋には塵居を設ける。総体を黒漆りとし、金、青金、銀を蒔き分けた薄肉高蒔絵を中心とする技法で大堰川の秋景をあらわしている。川の流水や川面に舞う楓の葉は金平蒔絵に付描、木の幹や岩には金銀切金、他にも描割など精緻な技法を用いている。蓋裏には梨子地にやはり種々の技法を用いて流水に蛇籠、土坡に岩、楓の葉、筏に乗る人物をあらわし、上位に浮かぶ三日月には銀平文を用いている。身の内は左右に懸子を納めた「二枚懸子形」で、中央の厚い下水板に木瓜形縁金地の硯と銅製の牡丹文水滴をはめ込んでいる。大堰川は京都を流れる桂川を嵐山の渡月橋付近で呼ぶ名称で、古くから貴族が船遊びに訪れた紅葉の名所であり、また『源氏物語』などの文学作品にも登場する。伝清水九兵衛。

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