(資料群)一般購入資料(令和元年度)

資料群・作家名(ヨミ)イッパンコウニュウシリョウ(レイワガンネンド)

略歴・解説

 香川県立ミュージアムでは、作品・資料の収集方法のひとつとして、購入を行っており、令和元年度は目録に示すような資料を収蔵した。同年度に開催した特別展「日本建築の自画像 探究者たちのもの語り」(会期 令和元年9月21日~12月15日)に関わる建築関連資料や刊行物が収集内容である。
 『軍人会館競技設計図集』は、昭和3年(1928)に昭和天皇の御大礼記念事業として建設計画が立てられた軍人会館の設計競技(昭和5年実施)において、「当選」(入賞)した設計図面をまとめたものである。一等当選の小野武雄案をはじめ、二等一席~二席の2案、三等一席~三席4案(三等二席が2案)、佳作
4案の計10案の図面が掲載されている。設計競技に関する説明や各案に対する評価等は付属していない。昭和時代初期における建築に対する考え方をとらえる上での好資料のひとつとして位置づけられる。
 『現代文学』は昭和14年~同19年にかけて46冊刊行された文芸同人雑誌。第五巻三月号には、坂口安吾の「日本文化私観」が掲載されている。建築史においても「日本的なもの」に対する関心・議論がみられ、その比較対象として、文芸界における意見を知る資料となろう。
 『稿本日本帝国美術略史』は、フランスのパリ万国博覧会の開催に際してフランス語版として編さんされ、その稿本を明治34年(1901)に刊行した同名書籍の縮刷再版本である。原始・古代から江戸時代までの美術史を概観する内容で、当初、建築は時代ごとの章立て構成中に組み入れられていた。縮刷再版に際し、建築分野に関して建築家の伊藤忠太が「改修」(同書「凡例」による)し、「建築之部」が別に設けられた。伊藤の建築に対する見解をうかがうことができる資料のひとつである。
 『過去の構成』は、建築家・岸田日出刀が、自身の撮影した古建築の写真と著述した文章で構成された書籍。昭和4年に刊行され、同13年・26年に再刊された。本資料の奥付から昭和13年第1版が印刷され、同26年に改訂2版、同30年に改訂3版が印刷されたことが分かる。冒頭に掲載された昭和4年の自序で執筆意図を、建築史を述べるものではなく、「過去の日本の建築、より適切には過去の日本の造形芸術全般に渉り、現代人の構成意識ともいふべき観点から展望を試みようとした」と記している。日本の古建築への視点に影
響を与えた資料のひとつに位置づけられる。
 『法隆寺建築綜観』は、内題に副題「昭和修理を通じて見た法隆寺建築の研究」とあるように昭和9年から着手された法隆寺の解体修理に伴う調査成果に基づく研究書である。文部技官浅野清氏が京都大学において文学部史学科の国史・考古学・美術史専攻の学生向けに行った講義の草稿に加筆して刊行された。序文を執筆した京都大学文学部考古学教室の梅原末治は、法隆寺の解体修理において実施された建築および発掘の調査研究方法は、考古学の規範とすべきと記している。
 『戦後建築の来た道行く道―豊かな人間社会を築くための建築の役割―』は、東京都の建築設計業務に従事する者の福利厚生のために、昭和44年に設立された東京建築設計構成年金基金が、25周年を迎えたことを記念して出版されたものである。記念事業としては開催された3本のシンポジウム記録、インタビュー、「建築のあるべき姿」としてまとめられた小論集、1945年(昭和20年)から始まる戦後建築年表で構成されている。「戦後建築の成立と私」と題された丹下健三へのインタビュー記録が掲載されている点が注目される。
【参考文献】
特別展図録『日本建築の自画像 探究者たちのもの語り』(香川県立ミュージアム、令和元年)

この資料群・作家の収蔵品一覧[全6件]

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