(資料群)讃岐習俗参考館 資料(1)

資料群・作家名(ヨミ)さぬきしゅうぞくさんこうかんしりょう(1)

略歴・解説

当資料は、昭和58年(1983)に開館した讃岐習俗参考館で収集・展示されていた資料の一部であったが、当館が引き継ぎ、今後も歴史資料として活用してゆくことになった。
資料は戦後の復興や急激な社会の変化に相反するように失われつつあった古来の習俗を、残し伝える目的で収集された民芸品を中心とする資料807件と主に昭和40年代から定期購読されていた雑誌や図書など1239件である。その大要を以下にあげる。
・やきもの 御厩焼、岡本焼、大町焼や、三谷林叟を始祖とする屋島焼など、県内の代表的なやきものが収集されている。器種は火鉢、炭斗、せいろう、こたつや、豆類や穀類を煎る際に用いる素焼きの大皿(ほうろく)などの生活雑器が多い。現在は、陶管や植木鉢、瓦などの生産が主となってしまった感の強い県内窯業であるが、かつて、本県では鉄工品の産出が少ないため厨房生活用具の多くがこのようなやきものでまかなわれていたという。御厩焼や岡本焼は香川県伝統的工芸品として指定され、現在では、技術の保存、伝承に一定の社会的な理解を得られるようになっているが、当資料が収集された昭和40年代から50年代において僅かに伝統的な技法で日用雑器の製作を続けていた御厩焼の橋本ナカや小野原義夫らの手によるもの(資料40、42、65、69、71、78)が収集されており、貴重である。また、資料752は伝世品の実物が発見されたことを機に、昭和54年に岡本焼の技法で復元された土風呂である。記録のうえでは、金毘羅参詣膝栗毛や讃岐国名勝図絵などで、当地方で素焼きの大甕が風呂釜として使用されたり、製造されていたことが知られていたものである。復元に際しては詳細な記録、映像化も行われている。
・染織品 人々の日常の衣料として使用された、木綿の絣とのり染の布地が中心である。隣県の愛媛県では伊予絣として絣地の織物が今日も伝わっているが、香川県においては、農家の家内生産による絣織物は昭和前期に途絶えてしまっている。収蔵資料は、県内産のものを中心に単純な縦絣、横絣、縦横の絣模様では飽き足らず、様々な模様の絵絣を生み出した民衆の美意識と高い技術に着目して収集されたものである。松竹梅や鶴亀などの吉祥模様から、文字や文明開化の世相を織り込んだものにいたるまでバラエティーに富んでいる。また一方、のり染めは、香川県伝統的工芸品としてさぬきのり染めの名で現在も受け継がれている。米糊を防染材とする染織の技法は、元来、友禅染のものを綿布に応用したものといわれる。収蔵資料には、手描きで糊を置き、見事な絵柄を染め抜く筒描きの技法で作られた絵付木綿、風呂敷、油単などの一品ものや、伊勢の白子が主な産地として知られる渋紙の型紙(資料417~435)を使って一定の文様を大量生産した型染の生地が多く集められている。
・木工品 本県の木工品といえば漆工品が代表的であり、当資料にも後藤塗りの角盆(資料439)などの漆工品がある。その他、曲げ物や、県伝統工芸士の手による資料505、514などの指物や、資料642の薬戸棚に代表される家具などの木組み品がある。
・一閑(貫)張の紙工品 一閑(貫)張は竹や木で組んだ骨組みに和紙を貼り、漆や柿渋で塗り固めて作る様々な小物用の器類で、ちりとり(資料545)やジョウゴ(資料546)なども収蔵されている。県内では生産が一時途絶えていた時期もあったが復活し、昭和62年に香川県伝統的工芸品に指定されている。資料578~580はその型用の籠で、また、資料549は別の素材でつくられたイミテーションで、本来の伝統的な技法を示す目的で収集されたものである。
・金工品 資料591・592・594・611の打ち出し銅器は香川県伝統的工芸品に指定されているものである。また、観音寺市の職人が保持していた伝統的な焼印の鋳造技術は中・四国で唯一といわれた希少なものであった。(資料602~609)
・玩具類 資料683の仁尾産の張子虎、684の八朔馬、685の宮内フサによる奉公さんの張り子人形、686の金毘羅でこ、かつて高松周辺で婚姻の際に近所の子供に配られたという嫁入人形(資料690)などは、香川の代表的な郷土玩具である。
・その他、天保年間の年代が記された四国遍路の納札(資料670・671)などの信仰関係資料、資料693~704の時局関連の資料、また614~625の燭台から石油ランプにいたる灯火具類やその他、日常の衣食住や、生業に用いられた各種の道具類など多彩な内容の資料は、今後の博物館活動の様々な場面での活用が期待される。
・図書・雑誌類 主に昭和40年代から50年代、あるいは平成7年にいたるまで購読されていた『民芸』、『季刊 用と美』、『季刊「銀花」』などの民芸、古美術関係の雑誌が中心である。資料752の土風呂の再現に関する報告が『生活』に掲載されている。また、『あるくみる きく』は旅行雑誌であるが、戦後を代表する民俗学者宮本常一の監修で、文字通り「あるき、みて、きいた」旅と民俗的調査の事例が数多く掲載されている。
(香川県歴史博物館『収蔵資料目録 平成11年度』より、一部修正し転載)

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