(資料群)松本A家 資料

資料群・作家名(ヨミ)まつもとAけしりょう

略歴・解説

「土蜘蛛草紙」は、平安時代中ごろの武将、源頼光が渡辺綱を従えて数々の妖怪変化に遭遇し、最後に土蜘蛛を退治する絵巻物語で、『源平盛衰記』などの説話に影響を受けて成立したものである。原本は鎌倉時代末~室町時代初期の作で、大和小泉藩主の片桐家に伝わり、現在は東京国立博物館の所蔵(重要文化財)となっている。
1は江戸時代に模写されたものであり、衣服の図柄や文様など略す箇所も若干見られるが、細部の色彩など丁寧に写されている。また、以下に掲げる奥書がある。
「此図ハ片桐家の所蔵 絵者土佐
長隆筆 詞書ハ兼好法師筆也 (ト云々)」(奥書①)
「右奥書長隆筆候 存之 如何也
写ヲ亦模故正筆一覧之上可極者也」(奥書②)
奥書②によれば、この絵巻は、片桐家所蔵の絵巻を写した写本(奥書①がなされた本)を、更に模したものであり、原本にあたって土佐長隆の絵かどうかを極めなさいと書かれている。つまり、原本の「孫」にあたる写本と言えよう。
東京国立博物館には、原本のほかに、江戸時代に描かれた模本がある(以下、東博模本とする)。当資料の紙の配列は、江戸時代後期の原状を伝える東博模本と同様であり、原本の錯簡が生じる以前に写された写本から作られたと考えられる。ただし、東博模本との関わりは不明である。今後写本の系統を探るための重要な資料となろう。
松本家は旧高松藩士の家と姻戚関係にあり、その関係からもたらされ伝わったものとのことである。「猿図」も、原本は不明であるが、谷文晁の何らかの画を模したものと考えられ、「土蜘蛛草紙」と同様の伝来であろう。
(香川県歴史博物館『収蔵資料目録 平成10年度』より、一部修正し転載)

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