略歴・解説 | 寄贈者は、高松藩家老であった木村黙老(1774~1856)の玄孫(やしゃご)にあたる。本資料は、寄贈者の母が木村家より嫁いだ際に持参したという黙老筆の牡丹孔雀図と短冊箱の2点からなる。
木村黙老は、九代藩主松平頼恕の家老として坂出塩田の開発や砂糖の専売などに着手し、藩の財政立て直しに功があった。国史編纂のための史局孝信閣を設立したほか、自らも学問や詩画を好み、『聞くまゝの記』、『続聞くまゝの記』などの著作や絵画作品を残している。牡丹孔雀図には、「乙卯陽月/八十二歳黙老摸」の落款と「黙老」・「通明之印」の印章があり、黙老の没する前年の安政2年(1855)に描かれた作品であることがわかる。牡丹と孔雀は近世以降多くの画家によってしばしば描かれた画題であり、款記にある「摸」の文字はそのような作品のいずれかを摸したとの意味であろう。現存する黙老の絵画作品が少ない中で、晩年の制作活動を知ることのできる貴重な作である。なお、箱は別箱であるが、墨書から安政3年作の黙老筆郭子儀図(作品の所在は不明)のものと知れて興味深い。この他、菊文短冊箱も牡丹孔雀図と共に持参されたものというが、制作年代などについては詳らかでない。
(香川県教育委員会『歴史博物館整備に伴う収蔵資料目録 平成8年度』より、一部修正し転載) |