略歴・解説 | 本資料は、八朔の団子馬の型枠や明治・大正期の四国遍路に関わる資料からなる。
香川県内では男子の節供を午節供と呼ぶなど、節供の祝いを八朔(8月1日)に行うところが多い。中でも男子の初節供には団子の馬を作って嫁の実家などから贈ったという。餅米と粳米を混ぜたものを団子状にして馬をかたどり、長命なお婆さんなどが使っていた着物の紐などを手綱として飾り付けたという。『西讃府誌』(安政3年)にも「猪駒」(シシコマ)として紹介されており、その年穫れた新米でその馬を作ったともいわれている。飾りつけた団子の馬は、八朔が終わると下げて家族で食べたという。この香川県の八朔行事は、平成8年11月に「讃岐の馬節供」として文化庁の「記録作成等の処置を講ずべき無形の民俗文化財」に選択された。
また、四国遍路に関わる資料としては、明治45年の納経帳や大正15年の札ばさみなどがある。納経した場所は、阿波の北部と讃岐の霊場にとどまっており、また2度3度と朱印が押されていることから、その範囲を数次にわたってまわったことがわかる。旅を通じて、世間を知り、つかの間の遊興を楽しんだ戦前のくらしを伺うことのできる資料である。
(香川県教育委員会『歴史博物館整備に伴う収蔵資料目録 平成8年度』より、一部修正し転載) |