略歴・解説 | 松田家は丸亀市で古くから米屋を営む旧家で、寄贈者の先代は香川県に関わる資料や作品を収集していた。
1「榊原式部大輔政祐書状」は収集資料である。大名間で季節や節目ごとに取り交わされた儀礼的な書状のひとつで、高松松平家当主に宛てられた寒中見舞い。差出人の榊原政祐は播磨国姫路城主15万石、享保11年(1726)に家督相続し、同12年に式部大輔に改め、17年に没する。高松松平家三代頼豊女冨姫を娶っており、榊原家と松平家は姻戚関係になる。榊原政祐の履歴から宛所の松平讃岐守は頼豊に比定される。文中に「精進揚」の文言が見られるが、これが享保15年11月の頼豊世子頼治の没に関わるものとすると、本書状は同
年のものである可能性がある。
2「第二回甌吾社冬期洋画講習会申込書」は、松田家と地域との関係で伝来した資料で、一般向けとみられる絵画教室の申し込み書である。「甌吾社(おうごしゃ)」および同社の「洋画研究所」については詳細が不明であるが、申込先となっている田岡洋画材料店は、場所は移転しているが丸亀市内に現存する商店。「洋画
講習会」の講師に、丸亀出身の作家・猪熊弦一郎をはじめ、香川県出身の谷口國介、平井為成の名前が確認される点が注目され、猪熊の肩書には「今年帝展特選に推せらる」の傍注がある。猪熊らの香川出身作家の丸亀における活動を示す資料として貴重である。 |