略歴・解説 | 当資料の多くは鴨居武氏の90歳の祝賀会に関するものである。氏は元治元年(1864)富田西村(現さぬき市大川町)に生まれ、小学校を卒業後、藤沢南岳のもとで漢学を学んだ。その後上京し、明治24年(1891)第一高等中学校の理科工科を卒業、工科大学(のちの東京帝国大学)では応用科学を専攻した。ドイツ・アメリカ留学を経て、東京帝国大学教授となり、明治43年(1910)香川県人で初めて博士号を取得した。応用電気化学・写真化学の権威で、特に板ガラス・人絹・製糖・製塩などの製造工業の発展に寄与した。第二次大戦で東京の家が焼失したため、その後は富田の旧宅で過ごした。90歳の祝賀会には多数の弟子達が来訪したという。
6は祝賀会の趣意書で、鴨居氏に記念品を贈るための献金を依頼したものである。10の鴨居氏の書状から記念品として自在椅子・ラジオ受信器・置時計・毛布が贈られたことがわかる。また、3には「鴨居武先生の九十歳をことほぐ会」の趣意に賛同した会員247名の氏名が記され、東京帝国大学時代の教え子や化学関係の企業名が多く見られる。「人格高潔にして常に心穏かに、人と競い争うことなく」(6趣意書)と称えられた鴨居氏の人柄を知ることのできる資料であるともいえる。
(香川県教育委員会『歴史博物館整備に伴う収蔵資料目録 平成8年度』より、一部修正し転載) |