【解説】舟のゐとく 上・下

大分類図書館デジタルライブラリー
中分類奈良絵本・絵巻物関係
小分類舟のゐとく 上・下
分野分類 CB歴史学
文化財分類 CB図書
資料形式 CBテキストデータベース
+解説舟のゐとく  [貴4201-4202]

〈外題〉なし
〈内題〉なし
〈巻冊〉2巻2軸
〈体裁〉巻子装
〈書写年代〉寛文・延宝頃(1661~1680)
〈表紙寸法〉縦33.1糎×横38.3糎
〈書入・貼紙〉なし
〈奥書〉なし
〈蔵書印〉なし
〈解題〉

室町時代物語(お伽草子)の絵巻。中国と日本の舟にまつわる説話を集成した物語である。

『舟のゐとく』の諸本は、本書の他に、天理大学図書館蔵絵巻、詞書のない絵だけのボストン美術館蔵『舟の始り物語』絵巻、本文だけの石川透氏蔵本が知られている。

本書と天理本の本文を比較すると、いくつか記事の出入りが確認できる。本書の下巻冒頭には神功皇 后の三韓征討記事があるが、天理本にはない。また本書には、天理本にある筑紫の大伴狭手彦が常世国 から橘を持ち帰る説話や、浦島太郎説話、聖徳太子が仏教を請来する説話がない。

本書の挿絵は、上巻に6図、下巻に5図あるが、本文と対応していない絵が3箇所確認できる。一つ目は、第4図の龍宮城での宴席の様子を描いたと思しき絵である。本書には、この絵に対応する本文は 確認できず、絵の前後には約2紙分の本文の脱落がある。二つ目は、第6図の神楽の様子を描いた絵で ある。この絵に対応する本文は、本書や天理本、石川本に見られない。唯一、ボストン本に構図の近い 絵が確認できる。本書では絵の直前の詞書が散らし書きになっていないことから、本来別の箇所にあったものと推測される。三つ目は、第10図の仏法伝来の様子を描いた絵である。これも本書には対応する 本文がなく、挿絵のあとに脱文がある。こうした錯簡は、本書の成立以後、補修の過程で生じたものと思われる。

なお、本絵巻の詞書書写者は、本学所蔵『呉越絵』(貴2367~2369)や『張良絵巻』(貴1739~1740)と同一人物であると推定されている。また、この三つの絵巻の挿絵には、構図や画風が酷似するものが複数見られる。加えて、紙高や本文の料紙、下絵などの装訂が共通していることから、これらの絵巻が同時期に同一の工房で制作された可能性が高いと考えられる。

〈翻刻〉

・針本正行 山本岳史「國學院大學図書館所蔵『舟のゐとく』の解題と翻刻」(『國學院大學 校史学術資産研究』2 2010年3月)

〈参考〉

・濱中修「『舟のゐとく』の形成」 (初出『伝承文学研究』29 1983年8月、『室町物語論攷』新典社 1995年再録)

・石川透「ボストン美術館の絵巻について」 (『むろまち』10 2006年3月)

・大谷大「新出異本『舟の威徳』解題と翻刻」 (『緑岡史林』33 2009年3月)
+登録番号(図書館資料ID)貴4201-4202
資料ID143216
所有者(所蔵者)國學院大學図書館
-絵物語(テーマ検索)
143215 37 2020/11/18 r.teshina 【解説】舟のゐとく 上・下 【解説】舟のゐとく 上・下 貴4201-4202 02 027 舟のゐとく  [貴4201-4202]

〈外題〉なし
〈内題〉なし
〈巻冊〉2巻2軸
〈体裁〉巻子装
〈書写年代〉寛文・延宝頃(1661~1680)
〈表紙寸法〉縦33.1糎×横38.3糎
〈書入・貼紙〉なし
〈奥書〉なし
〈蔵書印〉なし
〈解題〉

室町時代物語(お伽草子)の絵巻。中国と日本の舟にまつわる説話を集成した物語である。

『舟のゐとく』の諸本は、本書の他に、天理大学図書館蔵絵巻、詞書のない絵だけのボストン美術館蔵『舟の始り物語』絵巻、本文だけの石川透氏蔵本が知られている。

本書と天理本の本文を比較すると、いくつか記事の出入りが確認できる。本書の下巻冒頭には神功皇 后の三韓征討記事があるが、天理本にはない。また本書には、天理本にある筑紫の大伴狭手彦が常世国 から橘を持ち帰る説話や、浦島太郎説話、聖徳太子が仏教を請来する説話がない。

本書の挿絵は、上巻に6図、下巻に5図あるが、本文と対応していない絵が3箇所確認できる。一つ目は、第4図の龍宮城での宴席の様子を描いたと思しき絵である。本書には、この絵に対応する本文は 確認できず、絵の前後には約2紙分の本文の脱落がある。二つ目は、第6図の神楽の様子を描いた絵で ある。この絵に対応する本文は、本書や天理本、石川本に見られない。唯一、ボストン本に構図の近い 絵が確認できる。本書では絵の直前の詞書が散らし書きになっていないことから、本来別の箇所にあったものと推測される。三つ目は、第10図の仏法伝来の様子を描いた絵である。これも本書には対応する 本文がなく、挿絵のあとに脱文がある。こうした錯簡は、本書の成立以後、補修の過程で生じたものと思われる。

なお、本絵巻の詞書書写者は、本学所蔵『呉越絵』(貴2367~2369)や『張良絵巻』(貴1739~1740)と同一人物であると推定されている。また、この三つの絵巻の挿絵には、構図や画風が酷似するものが複数見られる。加えて、紙高や本文の料紙、下絵などの装訂が共通していることから、これらの絵巻が同時期に同一の工房で制作された可能性が高いと考えられる。

〈翻刻〉

・針本正行 山本岳史「國學院大學図書館所蔵『舟のゐとく』の解題と翻刻」(『國學院大學 校史学術資産研究』2 2010年3月)

〈参考〉

・濱中修「『舟のゐとく』の形成」 (初出『伝承文学研究』29 1983年8月、『室町物語論攷』新典社 1995年再録)

・石川透「ボストン美術館の絵巻について」 (『むろまち』10 2006年3月)

・大谷大「新出異本『舟の威徳』解題と翻刻」 (『緑岡史林』33 2009年3月) 1

この資料に関連する資料

PageTop