よろずよ

大分類万葉神事語辞典
分野分類 CB文学
文化財分類 CB学術データベース
資料形式 CBテキストデータベース
+項目名よろずよ;よろづよ;万代
+項目名(旧かな)よろづよ
+表記万代
TitleYorozuyo
テキスト内容限りなく多くの年月、永遠の意。紀から『続日本紀』にまでその用例がおよぶ。万葉集中にも44例を数えるヨロヅヨは一字一音の仮名書き例のほか、「万代」「万世」「万歳」の各例がある。桜井満が検討した結果によると、①雑歌に多様され、②その使用例は初期万葉には見当たらず、持統朝の人麻呂以後の用例であること、③紀では658(斉明天皇4)年以前に、『続日本紀』では724(神亀1)年以降に現れ、特に、736(天平8)年以降の9年間に『続日本紀』の用例14例中8例が集中すること等が指摘されている。桜井は②と③の結果からさらに、聖武朝におけるヨロヅヨ思想の高まりと「『万葉集』命名の本縁」の存在を指摘している。そして、「天皇の御寿と大御代を祝し、その万歳を祈る」ことがヨロヅヨ思想であり、これを「『歌づき奉る』伝統」と呼んだ。確かに、万葉集等にみられるヨロヅヨの表現は時間的な永続性を詠う常套表現である。しかし、そのなかにも、「ももしきの 大宮人は 天地と 日月と共に 万代にもが」(13-3234)、「あり通ひ 仕へ奉らむ 万代までに」(17-3907)、「天地と久しきまでに万代に仕へ奉らむ黒酒(くろき)白酒(しろき)を」(19-4275)のように大宮人の奉仕をことさらに強調する表現が存在する。これは、儀礼歌の表現形式の一つとして、祭儀の周縁部(大宮人)を詠み込むことで、間接的に中心部を讃美する手法、つまり、「奉仕」という行為の永続性、統治者への讃美との解釈も成り立つが、城﨑陽子はこの背後に「君臣祖子の理」に基づく思想があるとみている。城﨑は、元正天皇即位詔から、歴代天皇の中でも元正ほど君主としての即位を強く意識した天皇はなく、その政治理念は即位詔にみられる「君臣祖子の理」にあったと考えた。そして、この政治理念の教化という目的があったからこそ礼楽思想を背景として、何度目かの万葉集の編纂が元正朝に行われ、15巻本万葉集が成立するに至ったと考えている。そして、元正の即位詔に「万代の基」とも言い換えられている「君臣祖子の理」は、これをもととして忠誠心の確認と継続を詠うことによって保たれる君臣の関係性を象徴する語であったと考える。櫻井満『櫻井満著作集 万葉集の民俗学的研究』3(おうふう)。城﨑陽子『万葉集の編纂と享受の研究』(おうふう)。
+執筆者城﨑陽子
コンテンツ権利区分CC BY-NC
資料ID32415
-68979402009/07/06hoshino.seiji00DSG000805よろずよ;よろづよ;万代Yorozuyo限りなく多くの年月、永遠の意。紀から『続日本紀』にまでその用例がおよぶ。万葉集中にも44例を数えるヨロヅヨは一字一音の仮名書き例のほか、「万代」「万世」「万歳」の各例がある。桜井満が検討した結果によると、①雑歌に多様され、②その使用例は初期万葉には見当たらず、持統朝の人麻呂以後の用例であること、③紀では658(斉明天皇4)年以前に、『続日本紀』では724(神亀1)年以降に現れ、特に、736(天平8)年以降の9年間に『続日本紀』の用例14例中8例が集中すること等が指摘されている。桜井は②と③の結果からさらに、聖武朝におけるヨロヅヨ思想の高まりと「『万葉集』命名の本縁」の存在を指摘している。そして、「天皇の御寿と大御代を祝し、その万歳を祈る」ことがヨロヅヨ思想であり、これを「『歌づき奉る』伝統」と呼んだ。確かに、万葉集等にみられるヨロヅヨの表現は時間的な永続性を詠う常套表現である。しかし、そのなかにも、「ももしきの 大宮人は 天地と 日月と共に 万代にもが」(13-3234)、「あり通ひ 仕へ奉らむ 万代までに」(17-3907)、「天地と久しきまでに万代に仕へ奉らむ黒酒(くろき)白酒(しろき)を」(19-4275)のように大宮人の奉仕をことさらに強調する表現が存在する。これは、儀礼歌の表現形式の一つとして、祭儀の周縁部(大宮人)を詠み込むことで、間接的に中心部を讃美する手法、つまり、「奉仕」という行為の永続性、統治者への讃美との解釈も成り立つが、城﨑陽子はこの背後に「君臣祖子の理」に基づく思想があるとみている。城﨑は、元正天皇即位詔から、歴代天皇の中でも元正ほど君主としての即位を強く意識した天皇はなく、その政治理念は即位詔にみられる「君臣祖子の理」にあったと考えた。そして、この政治理念の教化という目的があったからこそ礼楽思想を背景として、何度目かの万葉集の編纂が元正朝に行われ、15巻本万葉集が成立するに至ったと考えている。そして、元正の即位詔に「万代の基」とも言い換えられている「君臣祖子の理」は、これをもととして忠誠心の確認と継続を詠うことによって保たれる君臣の関係性を象徴する語であったと考える。櫻井満『櫻井満著作集 万葉集の民俗学的研究』3(おうふう)。城﨑陽子『万葉集の編纂と享受の研究』(おうふう)。
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