たまばわき

大分類万葉神事語辞典
分野分類 CB文学
文化財分類 CB学術データベース
資料形式 CBテキストデータベース
+項目名たまばわき;たまばはき;玉箒
+項目名(旧かな)たまばはき
+表記玉箒
TitleTamabawaki
テキスト内容①ガラス玉を貫いてかざり付けた箒。②植物名、〔玉掃〕。長忌寸意吉麻呂の歌(16-3830)には、「玉掃」を刈って来いとあり、『代匠記(精)』に「草ノ名ナリト見エタリ。サレト如何ナル草ト云事ヲ知ラス」と注するように、さまざまな草木名があげられてきた。『本草和名』は「地膚」を「爾波久佐(ニハクサ)一名末岐久佐(マキクサ)」と読んでいる。ニハクサはホウキグサの異称、マキクサは同じく古称である。玉箒の材料は今日では、きく科こうやぼうき属こうやぼうきのことを指す。関東以西の山地に自生する高さ1メートルほどの落葉小低木で、茎を刈って枝を束ねたもの。①758(天平宝字2)年正月3日、初子(はつね)の日に孝謙天皇から廷臣に「玉箒」を下賜され、詔の旨に応えた大伴家持の歌(20-4493)には「初春の初子の今日の玉箒は、手に執るだけで揺れて音がする玉飾りの緒である」(『新大系』)とみえる。上の句は下賜された「玉箒」称揚し、下の句では、「ゆらくたまのを」に家持が特に意を用いたところがある。「たま」は美しいものを褒める意味のほかに、霊魂や生命力を表わす語とみなされている。土橋寛は「ゆらく玉」と「ゆらく魂の緒」とを掛けた作意があると説き、歌は「頂戴いたしました正月初子の玉箒を手に取りますと、箒の枝頭の玉が揺れ動き、それにつれて私の『魂の緒』(生命力)も、揺れ動く(活動する)心地がいたします」(「『タマ』の両義性」)という答礼の歌であると述べる。『新全集』は「たまのを」の解釈にふれて、「この玉ノ緒は玉箒の玉を緒に通して吊したものをいう」「ただし、現物の箒では、玉が揺れるようにはなっていない」と指摘する。その「玉箒」の現物は、天平宝字2年正月子日に、東大寺から孝謙天皇へ献納された「子日目利箒(ねのひのめどきほうき)」2口であり、正倉院南倉に収蔵されている。「目利」の由来は、まめ科はぎ属めどはぎによるが、実際にはこうやぼうきである。『正倉院御物図録十四』の第10図と第11図には、箒の先に小さなガラス玉が数個残っている。把手を見ると、10図は紫色の染皮で包み金糸を巻いてあるが、11図は把手の染皮に金糸はなく、15段の玉痕だけが残っており、本来、そこには諸種の色のガラス玉が巻かれていたと考えられる(現存は1段だけである)。このような実態を正しく理解して、「玉の緒」を解釈しなければならないだろう。土橋寛「『タマ』の両義性」『日本古代の呪禱と説話』(塙書房)。『正倉院御物図録十四』(帝室博物館)。
+執筆者宮岡薫
-68686402009/07/06hoshino.seiji00DSG000512たまばわき;たまばはき;玉箒Tamabawaki①ガラス玉を貫いてかざり付けた箒。②植物名、〔玉掃〕。長忌寸意吉麻呂の歌(16-3830)には、「玉掃」を刈って来いとあり、『代匠記(精)』に「草ノ名ナリト見エタリ。サレト如何ナル草ト云事ヲ知ラス」と注するように、さまざまな草木名があげられてきた。『本草和名』は「地膚」を「爾波久佐(ニハクサ)一名末岐久佐(マキクサ)」と読んでいる。ニハクサはホウキグサの異称、マキクサは同じく古称である。玉箒の材料は今日では、きく科こうやぼうき属こうやぼうきのことを指す。関東以西の山地に自生する高さ1メートルほどの落葉小低木で、茎を刈って枝を束ねたもの。①758(天平宝字2)年正月3日、初子(はつね)の日に孝謙天皇から廷臣に「玉箒」を下賜され、詔の旨に応えた大伴家持の歌(20-4493)には「初春の初子の今日の玉箒は、手に執るだけで揺れて音がする玉飾りの緒である」(『新大系』)とみえる。上の句は下賜された「玉箒」称揚し、下の句では、「ゆらくたまのを」に家持が特に意を用いたところがある。「たま」は美しいものを褒める意味のほかに、霊魂や生命力を表わす語とみなされている。土橋寛は「ゆらく玉」と「ゆらく魂の緒」とを掛けた作意があると説き、歌は「頂戴いたしました正月初子の玉箒を手に取りますと、箒の枝頭の玉が揺れ動き、それにつれて私の『魂の緒』(生命力)も、揺れ動く(活動する)心地がいたします」(「『タマ』の両義性」)という答礼の歌であると述べる。『新全集』は「たまのを」の解釈にふれて、「この玉ノ緒は玉箒の玉を緒に通して吊したものをいう」「ただし、現物の箒では、玉が揺れるようにはなっていない」と指摘する。その「玉箒」の現物は、天平宝字2年正月子日に、東大寺から孝謙天皇へ献納された「子日目利箒(ねのひのめどきほうき)」2口であり、正倉院南倉に収蔵されている。「目利」の由来は、まめ科はぎ属めどはぎによるが、実際にはこうやぼうきである。『正倉院御物図録十四』の第10図と第11図には、箒の先に小さなガラス玉が数個残っている。把手を見ると、10図は紫色の染皮で包み金糸を巻いてあるが、11図は把手の染皮に金糸はなく、15段の玉痕だけが残っており、本来、そこには諸種の色のガラス玉が巻かれていたと考えられる(現存は1段だけである)。このような実態を正しく理解して、「玉の緒」を解釈しなければならないだろう。土橋寛「『タマ』の両義性」『日本古代の呪禱と説話』(塙書房)。『正倉院御物図録十四』(帝室博物館)。,513たまばわきたまばはき玉箒宮岡薫た1
資料ID32122

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