【解説】つしま祭

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文化財分類 CB図書
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+解説つしま祭 [貴4487]

〈外題〉つしま祭
〈内題〉なし
〈巻冊〉1巻1軸
〈体裁〉巻子装
〈書写年代〉
〈表紙寸法〉38.9糎
〈奥書〉ナシ
〈翻刻〉

津島神社(愛知県津島市)の尾張津島天王祭を描いたもの。現在は、7月第4土曜日に行われているが、かつては6月14日・15日(旧暦)に行われていた。「尾張津島天王祭の車楽船行事」として国指定無形民俗文化財となっており、平成28年にユネスコ無形文化遺産となった「山・鉾・屋台行事」にも含まれている。

尾張津島天王祭では、宵祭(試楽)に巻藁船、翌朝の朝祭に車楽船が出る。

巻藁船は、竹の先に付けた多くの提灯を半球状にして船の上に飾るものである。また、提灯は夜のうちに外し、翌朝には車楽船となる。車楽船は船には、能の演目にちなんだ人形をかざり、稚児が乗る。現在はでていないが、明治初期までは大山と呼ばれる全高20メートルとも云われる船が出ていた。これには鯛と大蛇、からくり、手摩乳・脚摩乳と呼ばれる翁と媼の人形などが飾られた。

本絵巻は冒頭に天王橋を描き、次いで宵祭、朝祭の様子を描く。前者には5艘の巻藁船、後者には大山と車楽船が合計11艘描かれている。朝祭では、市江車と呼ばれる車楽船が先導するが、本絵巻は大山を描く。大山には龍や鯛釣り恵比須、雷神、張良などの人形が飾られ、車楽船には羯鼓をつけた稚児が乗る。

本絵巻を大英博物館所蔵の「津島神社祭礼図屏風」、ギメ美術館所蔵の「津島祭礼図屏風」と比較すると、本絵巻の巻藁船・車楽船・大山船は押しつぶされた形状で描かれる。これは、絵巻は紙の高さに天地幅が決められており、屏風に比べて天地幅のあるものを描くには不向きである点に原因がある。一方で、絵巻は、本絵巻が宵祭、朝祭の順に描くように、時間の推移や場所の移動を表現するのに適した形態である。

さらに、大山や車楽船の姿を比較すると、本絵巻のものは両屏風と異なっている。本絵巻の作者は不明であるが、伝聞によって描いたものと推定されており、この違いは実際に見て描いたものではないことにもよるだろう。

このため、今後、他の尾張津島天王祭を描いた祭礼図や史料と比較し、どの部分が実際の祭礼を反映したものかを確認してゆく必要がある。また、他の資料と異なる点についても、同祭礼がどのようにイメージされたのかなどのテーマで研究してゆく必要がある。

〈参考〉

鬼頭秀明「津島天王祭りの山車風流−大山と車楽−」(『愛知県史民俗調査報告書4 津島・尾張』愛知県総務部総務課県史編さん室、2001年)

福原敏男「描かれた近世の祭礼」(『國學院大學研究開発推進機構紀要』9号、2017年)

『秘蔵日本美術大観1 大英博物館1』(講談社、1992年)

『秘蔵日本美術大観6 ギメ美術館』(講談社、1994年)
+登録番号(図書館資料ID)貴4487
資料ID143193
所有者(所蔵者)國學院大學図書館
-祭礼図(テーマ検索)
143192 37 2020/11/18 r.teshina 【解説】つしま祭 【解説】つしま祭 貴4487 02 017 つしま祭 [貴4487]

〈外題〉つしま祭
〈内題〉なし
〈巻冊〉1巻1軸
〈体裁〉巻子装
〈書写年代〉
〈表紙寸法〉38.9糎
〈奥書〉ナシ
〈翻刻〉

津島神社(愛知県津島市)の尾張津島天王祭を描いたもの。現在は、7月第4土曜日に行われているが、かつては6月14日・15日(旧暦)に行われていた。「尾張津島天王祭の車楽船行事」として国指定無形民俗文化財となっており、平成28年にユネスコ無形文化遺産となった「山・鉾・屋台行事」にも含まれている。

尾張津島天王祭では、宵祭(試楽)に巻藁船、翌朝の朝祭に車楽船が出る。

巻藁船は、竹の先に付けた多くの提灯を半球状にして船の上に飾るものである。また、提灯は夜のうちに外し、翌朝には車楽船となる。車楽船は船には、能の演目にちなんだ人形をかざり、稚児が乗る。現在はでていないが、明治初期までは大山と呼ばれる全高20メートルとも云われる船が出ていた。これには鯛と大蛇、からくり、手摩乳・脚摩乳と呼ばれる翁と媼の人形などが飾られた。

本絵巻は冒頭に天王橋を描き、次いで宵祭、朝祭の様子を描く。前者には5艘の巻藁船、後者には大山と車楽船が合計11艘描かれている。朝祭では、市江車と呼ばれる車楽船が先導するが、本絵巻は大山を描く。大山には龍や鯛釣り恵比須、雷神、張良などの人形が飾られ、車楽船には羯鼓をつけた稚児が乗る。

本絵巻を大英博物館所蔵の「津島神社祭礼図屏風」、ギメ美術館所蔵の「津島祭礼図屏風」と比較すると、本絵巻の巻藁船・車楽船・大山船は押しつぶされた形状で描かれる。これは、絵巻は紙の高さに天地幅が決められており、屏風に比べて天地幅のあるものを描くには不向きである点に原因がある。一方で、絵巻は、本絵巻が宵祭、朝祭の順に描くように、時間の推移や場所の移動を表現するのに適した形態である。

さらに、大山や車楽船の姿を比較すると、本絵巻のものは両屏風と異なっている。本絵巻の作者は不明であるが、伝聞によって描いたものと推定されており、この違いは実際に見て描いたものではないことにもよるだろう。

このため、今後、他の尾張津島天王祭を描いた祭礼図や史料と比較し、どの部分が実際の祭礼を反映したものかを確認してゆく必要がある。また、他の資料と異なる点についても、同祭礼がどのようにイメージされたのかなどのテーマで研究してゆく必要がある。

〈参考〉

鬼頭秀明「津島天王祭りの山車風流−大山と車楽−」(『愛知県史民俗調査報告書4 津島・尾張』愛知県総務部総務課県史編さん室、2001年)

福原敏男「描かれた近世の祭礼」(『國學院大學研究開発推進機構紀要』9号、2017年)

『秘蔵日本美術大観1 大英博物館1』(講談社、1992年)

『秘蔵日本美術大観6 ギメ美術館』(講談社、1994年) 1

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