クラプ(祖霊像)
ME. No. | 1374 |
---|---|
資料分類名 | 彫像 Figure |
現地名 | kulap |
素材 | 石灰岩 |
L.(㎝) | 8 |
W.(㎝) | 10 |
H.(㎝) | 35 |
地域区分 | メラネシア Melanesia |
推定収集地1 | ビスマルク諸島 ニューアイルランド島 南部/Bismarck Archipelago, New Ireland, South region |
収集者 | 小嶺 磯吉 |
寄贈者 | 小嶺磯吉 |
解説1 | 主に葬送儀礼用に制作使用されたもので、故人の肖像である。ただし、婚礼時の通過儀礼に用いられたこともあったという。各資料には年齢や性別、装飾にバリエーションがある。展示資料は男性像と女性像の2 体で、後者は陰唇の形状から成人女性像と考えられる。発達した眼窩上隆起は現地の人々を彷彿させる。男性像にみる顔の輪郭や口の表現はウリ像に類似し、腹部の前で手を組む姿勢もウリ像のなかに類例を探すことができる。指や毛髪、腕輪や首飾りといった細部も表現され、褪色摩耗が進行しているものの、顔面や胴体は彩色されていたことが分かる。製作時の像には、いま以上に見るものを惹きつける力があったにちがいない.1930 年代以降は、「珍奇」な土産物として西欧からの旅行者を喜ばせたことが知られている。 「文学部125年記念企画展 語り出す南洋の造形:慶應大所蔵・小嶺磯吉コレクション」展示冊子(pp.5-6)より |
執筆者2 | 臺浩亮 |
解説2 | クラプ像の製作は良質な⽯灰岩が採掘できるロッセル⼭脈周辺で⾏われていた。葬送儀礼における故⼈の肖像として使⽤したほか、婚姻儀礼での使⽤例も記録される。⼥性や⼦供はクラプ像を⽬にすることは許されなかったという。儀礼⼩屋にて彩⾊・展⽰されたのちに破棄、もしくは⻄欧の商⼈に売却された。1870年-1910 年代にかけて集中的に蒐集されたが、キリスト教の布教活動の拡⼤によりクラプ像を使⽤する儀礼は衰退の⼀途を辿った。その後はナマタナイ村落周辺で⼟産物として⽯灰岩像の製作が⾏われたことが知られる。⼩嶺の活動時期より、当コレクションに含まれるクラプ像は儀礼⽤具から⼟産物へと変質する過渡期に蒐集されたと思われる。ニューギニア⼟俗品図集に掲載される、おそらく⼩嶺⽒が経営していた商館で撮影されたと思われる写真には慶應大コレクションに含まれるウリ像、マランガン柱像とともに、これら2 体のクラプ像が写し込まれている。 これまでに、約500 体のクラプ像が博物館・美術館、個⼈のコレクションに現存することが確認されている。その⼤半が⼟産物として製作されたものと考えられ、中には⻄欧⼈を模したと思われる像も存在する。また同様の⽯灰岩製の像はセントジョージ⽔道を挟み対岸に位置するニューブリテン島ガゼル半島の秘密結社イニエット Iniet によって製作されたことが知られている。 |
過去に出品された展覧会 | 「語り出す南洋の造形:慶應大所蔵・小嶺磯吉コレクション」(慶應義塾大学三田キャンパス図書館新館1F展示室、2015 年1月9日~2月7日) |
本資料の掲載書籍 | 南の會 1937『ニウギニア土俗品図集(上)』南洋興発株式会社、第16図版下段右から一番目 渋沢敬三編 1965 『世界美術全集 第23巻 民族美術』角川書店、p.148 山口徹監修 山口徹・安藤広道・佐藤孝雄・渡辺丈彦編 2015『語り出す南洋の造形:慶應大所蔵・小嶺磯吉コレクション』 |
はじめに
慶應義塾大学には、メラネシアの島々で収集された民族資料が1800点余り収蔵される。主たる資料は、戦前・戦中に南洋群島で製糖業を展開していた南洋興発株式会社社長、松江春次氏のコレクションであった。そのなかには、明治期から独領ニューギニアで貿易業を営んでいた小嶺磯吉氏の収集品も多数含まれている。慶應義塾大学の民族学研究を主導した松本信廣先生が中心となり、コレクションの図録が昭和15年に刊行されている。松江氏のご子息が塾生だった縁もあり、終戦直後に三田キャンパスで所蔵されることとなった。世界的にも貴重な民族資料群である。
■ 参考文献
・山口 徹 2015 「ウリ像をめぐる絡み合いの歴史人類学:ビスマルク群島ニューアイルランド島の造形物に関する予察」『史学』85(1-3): 401-439
https://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=AN00100104-20150700-0401
・臺 浩亮 2020 「植民地期のニューギニアにおける小嶺磯吉の活動に関する予察:一九〇五年から一九一一年における収集活動を中心に」『史学』89(3): 1-52
https://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=AN00100104-20201200-0001
1. 「推定収集地」について
・小嶺磯吉ならびに南洋興発株式会社によって収集された民族資料については『ニウギニア⼟俗品圖集』や民族学考古学研究室が管理する資料カードに記載される情報、整理作業・類例検索の過程で得られた情報、シカゴ・フィールド博物館に所蔵される小嶺磯吉の収集品の情報を総合的に判断し、より可能性が高い地域を記載した。
・西北ソロモン調査団ならびにレンネル島調査団によって収集された民族資料については民族学考古学研究室が管理する資料カードに記載される情報を記載した。
2.掲載写真について
モノクロ写真は1970年代に在籍していた民族学考古学研究室所属の学生によって撮影されたもの、またカラー写真は2013年以降に民族学考古学研究室所属の教員・学生によって撮影されたものである。
3.解説文について
2015年以降に開催された民族学考古学研究室主催の展覧会にて掲載された解説文ならびに有志が執筆した解説文を本データベース上にて掲載している。未掲載の資料解説についても順次公開する予定である。
4.メラネシア民族資料整理およびデータベース編集参加者について
メラネシア民族資料データベース編集ならびに資料整理作業参加者は以下の通り(敬称略)
<データベース編集者>
山口徹(慶大・文・教授)、臺浩亮(慶大・文研・後期博士課程)、太刀川彩子(慶大・文研・修士課程)
<資料整理作業参加者>
安藤香里、市田直一郎、岩浪雛子、嘉生泰花、川本智仁、木下圭祐、黑川由紀⼦、⼩林真⾐⼦、⼩林⻯太、佐山のの、下⽥健太郎、鈴木伸太朗、鈴木帆奈、臺浩亮、太刀川彩子、田中祐壮、遠山裕佳里、長尾琢磨、長澤良佳、成澤可奈子、藤田絢花、牧田侑子、町田竜太郎、村井南、吉⽥友⾥恵
5.その他
本データベースに掲載されるメラネシア民族資料は民族学考古学研究室が管理しています。研究室の活動や資料に関するお問い合わせについては研究室ホームページ(http://web.flet.keio.ac.jp/~toru38/ethnoarch/)をご参照ください。
なお、所蔵資料の基礎情報に関する調査に際して、以下の研究助成事業にご支援いただきました。
・「植民地期に収集されたオセアニア造形物に収集側と譲渡側の交錯を読み解く歴史人類学」(代表者:臺浩亮、2017年度 慶應義塾博士課程学生研究支援プログラム(研究科推薦枠)、2017年4月1日~2018年3月31日)
・「20世紀初頭収集のメラネシア造形物に日本人収集者の戦略と交渉を読み解く歴史人類学」(代表者:臺浩亮、2018年度 慶應義塾博士課程学生研究支援プログラム(全塾選抜枠)2018年4月1日~2019年3月31日)
・「20世紀初頭のメラネシアを巡るコレクティング・コロニアリズム研究:モノから『収集の民族誌』を描く」(代表者:臺浩亮、公益信託澁澤民族学振興基金 平成30年度 大学院生等に対する研究活動助成、2018年4月1日~2019年3月31日)
・「植民地期のニューギニアにおける『収集の現場』とモノを巡る戦略・交渉の博物館人類学」(代表者:臺浩亮、2019年度 慶應義塾博士課程学生研究支援プログラム(研究科推薦枠)、2019年4月1日~2020年3月31日)
(最終更新日 2022.1.2)
慶應義塾大学には、メラネシアの島々で収集された民族資料が1800点余り収蔵される。主たる資料は、戦前・戦中に南洋群島で製糖業を展開していた南洋興発株式会社社長、松江春次氏のコレクションであった。そのなかには、明治期から独領ニューギニアで貿易業を営んでいた小嶺磯吉氏の収集品も多数含まれている。慶應義塾大学の民族学研究を主導した松本信廣先生が中心となり、コレクションの図録が昭和15年に刊行されている。松江氏のご子息が塾生だった縁もあり、終戦直後に三田キャンパスで所蔵されることとなった。世界的にも貴重な民族資料群である。
■ 参考文献
・山口 徹 2015 「ウリ像をめぐる絡み合いの歴史人類学:ビスマルク群島ニューアイルランド島の造形物に関する予察」『史学』85(1-3): 401-439
https://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=AN00100104-20150700-0401
・臺 浩亮 2020 「植民地期のニューギニアにおける小嶺磯吉の活動に関する予察:一九〇五年から一九一一年における収集活動を中心に」『史学』89(3): 1-52
https://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=AN00100104-20201200-0001
1. 「推定収集地」について
・小嶺磯吉ならびに南洋興発株式会社によって収集された民族資料については『ニウギニア⼟俗品圖集』や民族学考古学研究室が管理する資料カードに記載される情報、整理作業・類例検索の過程で得られた情報、シカゴ・フィールド博物館に所蔵される小嶺磯吉の収集品の情報を総合的に判断し、より可能性が高い地域を記載した。
・西北ソロモン調査団ならびにレンネル島調査団によって収集された民族資料については民族学考古学研究室が管理する資料カードに記載される情報を記載した。
2.掲載写真について
モノクロ写真は1970年代に在籍していた民族学考古学研究室所属の学生によって撮影されたもの、またカラー写真は2013年以降に民族学考古学研究室所属の教員・学生によって撮影されたものである。
3.解説文について
2015年以降に開催された民族学考古学研究室主催の展覧会にて掲載された解説文ならびに有志が執筆した解説文を本データベース上にて掲載している。未掲載の資料解説についても順次公開する予定である。
4.メラネシア民族資料整理およびデータベース編集参加者について
メラネシア民族資料データベース編集ならびに資料整理作業参加者は以下の通り(敬称略)
<データベース編集者>
山口徹(慶大・文・教授)、臺浩亮(慶大・文研・後期博士課程)、太刀川彩子(慶大・文研・修士課程)
<資料整理作業参加者>
安藤香里、市田直一郎、岩浪雛子、嘉生泰花、川本智仁、木下圭祐、黑川由紀⼦、⼩林真⾐⼦、⼩林⻯太、佐山のの、下⽥健太郎、鈴木伸太朗、鈴木帆奈、臺浩亮、太刀川彩子、田中祐壮、遠山裕佳里、長尾琢磨、長澤良佳、成澤可奈子、藤田絢花、牧田侑子、町田竜太郎、村井南、吉⽥友⾥恵
本データベースに掲載されるメラネシア民族資料は民族学考古学研究室が管理しています。研究室の活動や資料に関するお問い合わせについては研究室ホームページ(http://web.flet.keio.ac.jp/~toru38/ethnoarch/)をご参照ください。
なお、所蔵資料の基礎情報に関する調査に際して、以下の研究助成事業にご支援いただきました。
・「植民地期に収集されたオセアニア造形物に収集側と譲渡側の交錯を読み解く歴史人類学」(代表者:臺浩亮、2017年度 慶應義塾博士課程学生研究支援プログラム(研究科推薦枠)、2017年4月1日~2018年3月31日)
・「20世紀初頭収集のメラネシア造形物に日本人収集者の戦略と交渉を読み解く歴史人類学」(代表者:臺浩亮、2018年度 慶應義塾博士課程学生研究支援プログラム(全塾選抜枠)2018年4月1日~2019年3月31日)
・「20世紀初頭のメラネシアを巡るコレクティング・コロニアリズム研究:モノから『収集の民族誌』を描く」(代表者:臺浩亮、公益信託澁澤民族学振興基金 平成30年度 大学院生等に対する研究活動助成、2018年4月1日~2019年3月31日)
・「植民地期のニューギニアにおける『収集の現場』とモノを巡る戦略・交渉の博物館人類学」(代表者:臺浩亮、2019年度 慶應義塾博士課程学生研究支援プログラム(研究科推薦枠)、2019年4月1日~2020年3月31日)
(最終更新日 2022.1.2)