mirage

作家名(日)中田真裕
作家名(英)NAKATA Mayu
制作年2021
素材・技法漆、麻布、顔料、チタン粉
サイズH31 × Φ60cm
著作権表示© NAKATA Mayu
収蔵年2022(作品購入年月日:2022/03/10)
受入方法購入
解説1982年北海道(日本)生まれ。

2005年北海道大学水産学部を卒業。香川県漆芸研究所に入所。蒟醤(きんま)の技法を学び、その後、金沢卯辰山工芸工房に移り拠点を構えた。中田は風、空気、波紋など、移ろいゆく自然を題材に、彫と充填して研ぎ出す漆の色の積み重ねによって、多色で明るい漆の表現に道を開いている。他の蒟醤技法をとる作家と異なり、 作品のサイズが比較的大きく、器の表面積を広げて記憶や感情までをも彫り込むような、繊細さと大胆さの共存が魅力的である。また、コンテンポラリー・ダンスを学んだ経験から、自らの身体の可動域や、抱きかかえる、翳かざすなど、身体と作品との相互作用によってフォルムやサイズを選んでいる点にも特徴がある。

《mirage》は北陸で見られる蜃気楼をイメージした作品で、中田自身は焦がれているが未だ見ぬ景色を強く想いながら制作に取り組んだ。深みのある緑がかった色は、下塗りから約50回を超えて重ねられ、丹念な研ぎ出しによって見事に現れており、大らかな彫線と融合して力強い装飾性を発揮している。長い歴史の中で継承されてきた堅牢な乾漆と蒟醤の伝統技法について、中田自身は「長く残って未来にも見てもらえる、技法は発展し続ける」と言い、対象を捉えようとする自身の身体の動きそのものが彫線となり形となる現代的な表現と伝統技法との間に可能性を見出している。一般的な蒟醤の作品より大ぶりであり、それによって風景の雄大さが現れている。工芸の領域に重要な視点を提案する作品である。

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