うつろう世界

作家名(日)久野彩子
作家名(英)KUNO Ayako
制作年2016
素材・技法真鍮
サイズH52 × W65 × D69cm
収蔵年2020(作品購入年月日:2020/03/16)
受入方法購入
解説1983年東京都(日本)生まれ。

久野の作品は硬質で重厚な金属の質感と共に、細部にまで技巧を凝らした表現も併せ持つ。主に「都市」をテーマに、様態を変えながら増殖し、構築されていく都市のうごめく姿を想起させる久野の作品は、堅牢な金属に施された高密度の造形美を表現する。

主にロストワックス鋳造技法を用いて作品を制作する。東京に生まれ育った久野は、2011年の東日本大震災以降、都市空間における人造物と人間の手によって侵食されていく自然環境を意識しながら、金属と向かい合い、鋳造技法で対話するように真摯な態度で制作する。グーグルアースを通して俯瞰して見ること ができる地球上の都市を、鉄道や高速道路、建造物の輪郭を通じて、精密な鋳造技法の面や線で表現してい る。久野は、物質至上主義の世界観の行き着く果てがフクシマの悲劇を招いたとする現代社会のネガティブな側面を主題に制作している。《skyline-TOKYO-》 は、2021年開催のオリンピックに向けて変わりゆく 東京の姿に、他都市の変容を重ねて表現されている。 東京湾に架かるレインボーブリッジからの視点で、空を背景にしたビル群に高速道路や建設途中のクレーンが複雑に折り重なる眺望がモチーフとなっている。 都市の輪郭は、人の内面の影と重なり、精神世界を反映する。本作品の光景は、既成概念から私たちを自由にし、内も外もない壮大な眺めを見せてくれる。《うつろう世界》において久野は、人間社会における複雑に絡み合う物事や世の中に氾濫する情報、そして、人々が繰り返す建造と破壊、再構築といった行為を、未来へ続く生命エネルギーとしてポジティブに捉えている。鋳金の線の軌跡は菌糸のように増殖し、連続性のある時間と生命力のある現代の光景を浮かび上がらせる。

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