photo: KIOKU Keizo

「事実の残虐性」シリーズより

作家名(日)ザイ・クーニン
作家名(英)Zai Kuning
制作年2006-2015
素材・技法鉛筆、墨、油彩、ワックス / 紙
サイズH29 × W20cm、H29 × W20.2cm、H29 × W23cm(3点組)
著作権表示© Zai Kuning
収蔵年2017(作品購入年月日:2017/03/31)
解説1964 年シンガポール生まれ、同地在住。

1989 年にラサール・カレッジ・オブ・アーツのセラミック彫刻専攻を卒業後、人間の身体への関心から「拷問される身体」を主題とした作品を発表。彫刻、インスタレーション、パフォーマンス、絵画、音楽、ヴィデオ、映画、ダンスなど、近代以降の芸術分野にとらわれない、多彩な表現で知られるシンガポールを代表するアーティストである。2007年頃からはミュージシャンとして、古典的ガザル音楽からマレーシア伝統のアスリ音楽、パンク、サウンド・アートからノイズ・ミュージックまで、実験的なパフォーマンスの可能性を追求する一方、東南アジアを中心に社会問題に言及した作品も発表している。

ザイ・クーニンは幼少期からの自身の流浪の生活を顧みて、海の上に住む漂海民たちの歴史や暮らしに強い関心を寄せている。ザイが生まれたシンガポールは、現代では都市化が進んだ国として知られるが、領土は60以上の島々から成り、マレー語、タミル語、中国語、広東語、英語など、使われる言語も様々で、異なる民族が交わる場所として文化的多様性を維持している。しかし、近代化の途上で顧みられることのない歴史は、国の成り立ちはおろか、どこにも足跡を留めず人々の記憶にも残らない。「事実の残虐性」のシリーズは、そうして失われてしまった民族の歴史について思いを馳せ、海は豊かだが、必ずしも運命の渦から逃れられる場所へと導いてくれるものではないことを語る作品である。ここではシンガポールとインドネシア北西部、マレー半島の海域に暮らす海の民オラン・ラウ(Orang Laut)の歴史を参照しているが、それは自身の出自を探索する行為に匹敵する。表面を蜜蝋で覆い、これ以上、歴史が失われることがないように時間の流れを封印しているかのようである。

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