医者迎え

大分類伝承
公開解説クチとクワタという兄弟があった。母親が病気になり、クワタに「医者をお供してこい」と言いつけると、クワタは医者はどんなものかも知らないので、牛や馬や山羊を連れてくる。つぎにクチに言いつけるとクチが「自分が医者をお供してくるからお粥が炊けたらお 母さんにあげるように」と言って出ていくと、クワタは粥鍋が「クチ、クワタ、クチ、クワタ」と言うのでうるさくなって鍋を割って捨てる。つぎに酒瓶を高倉からおろそうとして、 クチが「しっかり尻をつかんでいよ」と言うと、クワタは自分の尻をつかんで、「いい」と言うので放したら、酒瓶は割れる。クチは怒ってクワタを俵に入れて海に捨てようとすると、目の悪い人が俵につき当たる。クワタが中から「目が悪いならこの中に入れ。自分もこの中に入って目の養生をしているのだ」と目の悪い人を俵の中に入れる。クチはその俵を海に捨て家に帰ってみると、魚を料理していたクワタが「兄さんがもっと沖に落とせばよかったのに、浅かったのでこんな小さな魚しかとれなかった」と言う。クチが「それでは自分を沖の方に落としてくれ。大きい魚を取ってくるから」と言ったの でクチを俵に入れて沖の方に捨てた。
公開解説引用日本昔話通観(1980年発行 株式会社 同朋舎出版) 695 ページ
小川 学夫氏所蔵

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