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青銅製匙

資料名(ヨミ)セイドウセイサジ
遺跡萩ノ原遺跡
解説 青銅で鋳造された木の葉形の匙(さじ)(スプーン)です。柄は途中で折れていて、端の近くの表面に十字に配置された列点があります。現存する長さは14.8㎝、柄の幅は0.7~1.1㎝、重さは28.9gです。
 青銅製匙が出土した萩ノ原(はぎのはら)遺跡は、市原市上高根に所在した古代寺院跡です。ゴルフ場造成に伴う発掘調査の結果、基壇(きだん)や掘立柱建物による平安時代(9世紀)頃の仏堂が検出されました。国分寺等の寺院と比較して規模が小さいこと、仏堂に隣接して竪穴建物跡が多く見つかったことから、集落内に建てられた「村落寺院」、あるいは僧侶の修行場である「山林寺院」と考えられています。匙は掘立柱建物跡である4号柱穴列の北側から見つかりました。
 この匙によく似たものは、奈良県東大寺の正倉院に納められているほか、朝鮮半島の新羅(しらぎ)でも出土しています。萩ノ原遺跡出土のものが、国産なのか、新羅産なのか、理化学的な成分分析を行っていないため不明ですが、いずれにしても奈良や京都などの中央から持ち込まれたものであると考えられます。平安時代の仏教説話集である『日本霊異記(りょういき)』上巻第十縁では、特定の寺から僧侶を招く様子がうかがえ、こうした中央と地方の僧侶間のネットワークによって青銅製匙がもたらされたのでしょう。
 青銅製匙の出土例は十数例ほどと全国的に少なく、珍しいものですが、そのほとんどは寺院跡で出土しています。寺院で行われる法会(ほうえ)(儀式)では、粥(かゆ)が食されることがあり、日用品ではなく、こうした法会で仏具として利用されたのでしょう。

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