横槌

資料名(ヨミ)よこづち
遺跡五所四反田遺跡
解説 古墳時代の木製農具、横槌(よこづち)です。左資料が長さ24.9cm、直径約8cm、柄の太さ2.5cm、595.9gの重さ(樹脂含浸後)で、中央資料が479.2g、右資料が706.0gです。
 硬い材質のアカガシ亜属の木で作られており、形は、布を叩いて柔らかくする砧(きぬた)や、豆を枝から取り外す豆打ち用の民俗資料によく似ています。農具など、生業や生活に密着した道具は、機能を追求した結果、古代から形がほとんど変わっていないものが多くあります。
 柄の端部は、野球のバットのようにグリップエンドが作り出されており、振り下ろした時にすっぽ抜けなくなるような工夫が施されています。ただ、砧によく似た左の横槌は、側面の摩耗があまり見られないのに、先端平面にはモミ状の粒が押し付けられたようなくぼみが見られることから、竪杵(たてぎね)のように長軸先端を作用部として使い、籾米の脱穀に用いられた可能性があります。
 横槌が出土した五所四反田(ごしょしたんだ)遺跡は東京湾岸の低地に位置します。昔から地下水位の高い立地だったため、通常は長い年月の間に分解されてしまい発見されにくい木製品が、1000点以上も見つかった珍しい調査事例です。木製品類は水路内のクランク部分に集中して出土していることから、上流の集落で使われていた大量の木製品が、水の力で流路内に運ばれ、クランク部に溜まったものと考えられます。

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