勾玉で飾られた壺

資料名(ヨミ)マガタマデカザラレタツボ
遺跡加茂遺跡C地点
時代・時期弥生時代後期後半
解説 弥生時代後期後半の壺形(つぼがた)土器の一部です。口縁(こうえん)直径22.0cm、残存部の高さは14.7cmです。
 外面には、粒の細かい縄文が横向きに施されるほか、地の部分に赤色顔料が塗られ、磨き上げられています。さらに円形と棒状の粘土を貼り付ける立体的な装飾も加えられています。
 特徴的なのは、頸部(けいぶ)に勾玉(まがたま)形の飾りが付けられていることです。下部は欠けてしまっていますが、土器表面に背中を向ける形で勾玉を表現したと見て間違いないでしょう。勾玉の両側に並ぶ長楕円形は管玉(くだたま)を表していると見られ、一体でネックレスを表現した可能性があります。
 一般的に、壺形の弥生土器は、現代の鍋のように煮炊きに用いる甕形(かめがた)土器とは異なり、赤く彩られるなど、装飾される傾向にあります。飾られた壺形土器は貯蔵用の土器であり、液体や種もみ(米のタネ)などの種子を入れて保管するのに用いられたようです。
 この資料が出土した加茂遺跡C地点は、弥生時代後期のムラの一部で、竪穴建物跡内の焼土層から多数の土器とともに発見されました。
 弥生時代は、食料を手に入れる手段として水田稲作の重要性が高まった時期です。もし、この壺に種もみが保管されていたとすると、勾玉のかたちは、単なるアクセサリーとしてではなく、イネの成長や豊作をうながす目的で、まじないの力が期待されたために表現された可能性が考えられます。同時期の遺跡から見つかることの多い土製勾玉も、人間用の普通のアクセサリーではなく、土器や木の枝にかけるなどして用いられた、まじないの道具だったのかもしれません。

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