土師器香炉蓋・脚付香炉

資料名(ヨミ)はじきこうろぶた・きゃくつきこうろ
遺跡萩ノ原遺跡
時代・時期平安時代
解説 平安時代に作られた焼き物の香炉(こうろ)です。上高根の萩ノ原(はぎのはら)遺跡から出土しました。
 香炉蓋(ふた)は直径16.8cm、高さ5.3cmでロクロによる成形です。4か所の円孔があけられ、中央にあるつまみ(鈕(ちゅう))は仏塔の先端にある相輪(そうりん)を模しています。一方、蓋に伴う脚付香炉は口径16.0cm、器高9.5cmでこれもロクロによる成形です。
 香炉は仏教儀式に用いられる道具で、香炉に香を入れ、焚(た)くことで不浄を払い、仏を供養することに使われます。通常、香炉蓋には数か所の孔があり、そこから良い香りの煙を漂わせたとみられます。出土した萩ノ原遺跡も平安時代(9世紀)頃の山林寺院、あるいは村落寺院と考えられている古代寺院跡であり、この香炉も法会(ほうえ)で使われたのでしょう。
 萩ノ原遺跡出土例のような相輪形鈕を持つ香炉蓋と、脚付香炉の組み合わせに似た資料に、塔鋺形合子(とうまりがたごうす)があります。法隆寺献納物や正倉院宝物、日光男体山(なんたいさん)山頂遺跡、長野県小島・柳原遺跡で出土しているこの資料は、青銅や銅製で、形状も球体を呈する点や香の入れ物である点が、萩ノ原遺跡出土の香炉と異なりますが、特徴的な相輪形の鈕や、脚付香炉である点が共通しています。萩ノ原遺跡の香炉も塔鋺形合子を模倣(もほう)したものと考えられます。
 塔鋺形合子のほとんどが伝世品であることを考えると、当時でも非常に貴重で高価なものだったと推測できます。多くの古代寺院では萩ノ原遺跡のように土師器で模倣したものを使用していたのでしょう。地方寺院での法会の実態を検討する上で貴重な資料です。

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