異形脚付土器

資料名(ヨミ)イケイキャクツキドキ
遺跡菊間手永遺跡
時代・時期縄文時代晩期前半
解説 縄文時代の不思議な形をした焼き物、異形脚付土器です。復元後の高さは12.2cm、幅9.0cm、奥行8.9cm、重量は322gです。
 市原市北西部、海岸平野を見下ろす台地上に位置する菊間手永遺跡から出土しました。遺跡は縄文時代から中世までつづく複合遺跡で、縄文時代には貝塚を伴うムラがありました。
 資料は、器(うつわ)部分の口縁を装飾する4単位の貼瘤(はりこぶ)や胴部をめぐる刻みに三叉文(さんさもん)、脚部の入組(いりくみ)三叉文など安行(あんぎょう)3a式の特徴を持ち、赤色顔料(ベンガラ)で彩色されています。O字状に曲がる中空の脚で自立することから、やや安定性を欠くものの、直立させ使用されたと考えらます。
 発掘調査で検出された際、器の部分と脚部は分かれた状態でした。同じ竪穴住居跡からは、石剣や浅鉢形土器のほかに、イヌを表現したと思われる動物形土製品といった「まじない」に関する遺物が多く見つかっており、この異形脚付土器も、非日常的な場面で用いられたと考えられます。
 銚子市の余山(よやま)貝塚や君津市の三直(みのう)貝塚で出土した異形脚付土器は、両脚部が台座状に合わさり、安定した接地面を持っています。それらに対して、中空土偶のように独立した二つの脚を有する点は特徴的といえ、異形脚付土器の中でも異なった意味合いがあるのかもしれません。なお、同じく縄文時代晩期の遺物である能満上小(のうまんかみこ)貝塚から出土した柄香炉(えごうろ)形土製品は、直接手に持って香炉のように使用するものと推定されており、異形脚付土器との関連性が指摘されています。

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