| 解説 | 本作は金属版モノタイプで、エディションをあえて1/1と記している。制作時期から銅版を用いたと推測されるが、原版は確認できず、はっきりとしたことは不明。1960+1982という年記は、過去(1960年)の発想や手法を元に、1982年に新作として制作したという意味である。1960年は評論家土方定一の尽力により作者が版画家として東京画廊でデビューした年で、同個展の出品作の大半は石版モノタイプであった。初期のモノタイプは石や金属版に塗ったインクを大小様々なヘラやペインティングナイフ、スクレイパーなどで、引っ掻いたりそぎ取ったりしながら描画したものを紙に転写して、一回刷りの作品が完成する。初期の版画にはそれまで描いていた油彩画を思わせる具象的な作品もあるが、本作品のようなモノクロームの無機的で硬質な質感を基調としながらも、作家の行為(手の軌跡)を想起させる有機的な味わいのある、独自の幻想的な世界を現出させたものが多い/本作品は、暗黒の画面に、連続するストローク(描線)により、鉄屑の片鱗の集積のようにも見える金属的なイメージが表されている。インク面をヘラでけずり落として生じた一つ一つのタッチは、モノクロームの豊かなグラデーションを備えており、抽象的な風景ながら、立体的な陰影や奥行きも感じさせる。モノタイプ版画においては、引っ掻く道具を重視し、また描画の手の動き(ストローク)を活かしながらも平滑なマチエールと独特の質感を得るため、インクの伸びと締まりを重要視したという。 |
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