辰の口

名称ヨミタツノクチ
時代昭和(戦後)
解説「ワラビ採るのは誰だ」口開け叫んだ大きな岩
 JR八戸線陸中八木駅から南へ2キロほど行ったところに、小子内地区がある。その浜手に「辰の口」という、大きな岩が海に突き出ているところがある。
 現在は、写真のように波で削られたり、道路ができたため小さくなってしまったが、昔はこの上が野原になっておりワラビやゼンマイがたくさん生えていたという。村人たちは「よくワラビ採りをしたものだ」。と述懐する。
 ある人が、その場所で日が暮れるのも忘れてワラビを採っていたところ、下の方から「こらあ、こらあ、ワラビを採っているのは誰だあ!」という、腹わたに響くような大きな声がした。ワラビ採りは不思議に思ってあたりを見回したが、誰も見えなかったので、また前と同じように夢中になっていたところ、「こらあ、こらあ、おらほのワラビを採っているのは誰だあー!」という声がした。
 また、ワラビ採りはまわりを見たが誰もいなかったので、ワラビ採りを続けた。そしたら、今度は「こらあ、こらあ、おらほのワラビをいつまでも採っているのは誰だあ!!」と叫ぶような声が聞こえたという。
 ワラビ採りは、急に恐ろしくなって今まで採ったワラビを全部投げ捨てて、家へ飛んで帰った。その人は、その夜まんじりともしないで、翌朝何人かを連れその場所へ行ってみたところ、今まで閉じていた岩が竜の口のように大きく開いていたという。
 そこで、小子内の人たちは、その場所を「辰の口」と呼んで、ワラビなど山菜を採らないようになったと伝えられている。
サイズ
地域小子内
資料ID101TS00107

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