越前壷

時代[鎌倉・室町]
資料解説14世紀に生産された越前焼の小壷で、頸部から上を割り欠いています。埋葬に用いられるやきもののなかには、割り欠きや穿孔を施されたものがあります。意図的に破壊することで、この世の存在とは切り離す意思があったと考えられています。
肩には記号と木の枝に見える文様が刻まれています。樹木や枝、草花をモチーフにした刻画文は越前焼だけでなく渥美焼・珠洲焼など中世に生産された陶器に見られるもので、単に樹木や草花が身近な存在であったというだけでなく、豊かな生命力を象徴する文様として求められていたようです。

本資料は昭和39年に越前町織田に所在する法楽寺裏山の法楽寺中世墓遺跡で発見されたもので、頸部の割り欠きは本資料が埋葬に伴っていたことを示しています。法楽寺中世墓遺跡から出土した越前焼の中には瓶子や水注のような宗教的意味合いが強い特殊品が発見されており、中世の越前窯の生産の様相を考えるうえで重要な資料となっています。

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