今立郡上大坪村萱谷村開田ニ付裁許絵図

今立郡上大坪村萱谷村開田ニ付裁許絵図

時代[江戸]
資料解説上大坪村と萱谷村(どちらも現越前市)が描かれており、当時のむらの景色がよく分かる大変貴重な資料です。
両村は、安政3年5月に渇水となり、新たに開田する(畑を田に変える)土地に水がいきわたるように話し合う必要が生じました。そこで、両村の代表者である惣代・長百姓・庄屋が、役人立ち会いのもと、開田地・水路・村境の位置を確認し合い、上大坪村内に新しく溜池を築くことなどを取り決めました。この絵図は、そうした協議に伴い作成されたものです。
絵図には、東西南北の方位が表記されています。上大坪村は北部、萱谷村は南部に位置しています。方位は現在と一致しており正確です。萱谷村の東部には庚申松(こうしんまつ)が描かれており、そのすぐそばを萱谷村の外周を結ぶ線(測量線と考えられる)がとおっています。このことから、庚申松は、測量のときに目印として利用されていたことがうかがえます。
この絵図最大の特徴は、通常は省略されることの多い家屋や制札場、地蔵堂なども詳細に描かれている点です。家屋は茅葺きの屋根が表現され、一軒一軒描き分けられています。また、制札場は木製の柱や屋根、地蔵堂は土台の石垣や朱色の柱まで細かく描かれています。ここまでむらの様子を詳細に描いている絵図は珍しいものです。

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