12月のノルマンディ風景

作者セザール・ド・コック
ArtistCésar de Cock
TitleEtude taken in Normandy in December
制作時期1889年
技法・材質キャンバス、油彩
サイズ47.2cm×68.3cm
署名等画面右下:César De Cook 1889
取得方法石原悦郎氏寄贈
取得年度平成11年度
所蔵品目録番号0287
作品解説フランス北西部ノルマンディーののどかな牧草地のなかに牛たちが佇んでいます。その中央の一頭がかわいらしくこちらを見つめています。12月の張りつめた寒空の中、雲間から差し込む柔らかな光は、草木の緑をもっとも美しく見せます。
 作者セザール・ド・コックは、1823年ベルギーの古都ゲントに生まれ、兄クサヴィエ(1818-96)と同じく、ゲント美術アカデミーに学びました。その後、兄と共にパリそしてバルビゾンで制作を始めます。その地で、コローやディアズ、ドービニーといったバルビゾン派の画家たちと親しく交わることとなります。バルビゾン派の画家たちの中でも、兄弟に特に強い影響を与えたのは、コローとドービニーであると言われますが、当時の批評家ブージェは兄弟の差異を次のように表現しています。「セザールはコローであり、クサヴィエはドービニーである。 弟はより繊細で、詩的であり、兄はより堅固であると同時に激しく情熱的である。」
 1860年代に、故郷に戻った兄弟は、リス川近くで風景画を多く制作し、ラーテム派と呼ばれるベルギーにおける芸術家コロニーの形成に先駆的役割を果たしました。バルビゾンというフランスの芸術家コロニーで、多くの影響を受けた彼らが、故郷ベルギーで新たに芸術家コロニーを築いたことは大変興味深い点です。ラーテム派は、 後にフランドル表現主義の画家たちを数多く生み出し、ベルギー近代絵画において重要な役割を担うグループへと成長していきます。
 全体としてロマン主義的な描き方ではありますが、《12月のノルマンディー風景》に見られる柔らかな光の表現は、ベルギーの印象主義をも予見していると言えるでしょう。
(音ゆみ子「所蔵品から」『府中市美術館だより』第16号、2005年10月、府中市美術館)

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