風景

作者久保田九一
ArtistKUBOTA Kyuichi
TitleLandscape
制作時期昭和25年(1950)
技法・材質キャンバス、油彩
サイズ90.1cm×116.4cm
署名等画面左下:K.KUBOTA.1950
取得方法井藤篤子氏寄贈
取得年度平成10年度
所蔵品目録番号0074
作品解説大きな黒い量塊。右の方がやや手前に、左の方が少し奥に、二軒の農家が左右に二つどんと置かれて、建っている。キュビスム風の構成的な画面によって、農家の立体的なヴォリュームが迫力をもってせまってくる。家と家が接する部分は明るくなっていて、砂を混ぜたような絵肌の道、藁葺き屋根などは白を混ぜた黄土色で塗られ、前後にかちっとした空間を感じさせる。奥にある左の家の背後、画面中央奥には、また家らしきものの黒い陰がある。ほとんど黒と茶色だけで塗られた、この三軒の農家の前後関係がしっかりしていて、開放的な空間を感じることができるのは、微妙な調子と確かなヴァルールを使える画家の技量に拠る。
 久保田九一は、明治44年(1911)茨城県に生まれ、川端画学校を卒業後、戦前に一九三〇年協会、二科展、独立美術協会に都市の風景を中心に多くの作品を出品した。戦後は府中にアトリエを移し、自由美術家協会会員として発表していたが、昭和30年(1955)前後に退会してからは、公募団体とはほとんどつながりを持たなかった。昭和初期の日本的フォーヴィスムの流れを組む、骨太な風景画や人物画を描き続けてきた郷土ゆかりの画家である。
 《風景》は、現在の府中市あたりをえがいたもの。久保田九一は、昭和21年に府中町(昭和29年に多磨村、西府村、府中町が合併して府中市となる)に移住し、特徴のある農家が散在していた付近の風景を描いていたという。
(山村仁志「作品解説」『府中市美術館所蔵作品50選』2000年、府中市美術館)

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