田園恋愛詩

作者ラファエル・コラン
ArtistRaphael Collin
TitleIdylle
制作時期1910年頃
技法・材質キャンバス、油彩
サイズ65.0cm×46.0cm
署名等画面左下:R.COLLIN
取得方法購入
取得年度平成10年度
所蔵品目録番号0289
作品解説なだらかな起伏の続く草原。水辺で戯れる半裸の男女とその後ろには山羊の姿が見える。全体に降り注ぐ柔らかな光は、牧歌的な、神話風の情景である。輪郭線はあいまいとなり、絵の具を混ぜずにキャンバスに直接置くことによって、明るい光と空気を表現しようとしている。全てが光に溶け込んでしまいそうだが、中央の二人はしっかりとした立体感を持って存在している。
 本作は、1890年に出版された『ダフニスとクロエ』の挿絵の中の、「クロエはダフニスに水浴びするようすすめた」と同じ図柄である。この本には、当館所蔵である《フロレアル》と同じ構図の挿絵もある。多色使いで挿絵の原画として描かれたとは考えにくいこと、また晩年期に特徴的な画風であることから、1890年以降の作と考えられる。
 1850年にパリで生まれたコランは、主題や人体デッサン、構図においてアカデミーの伝統を受け継ぎつつ、印象派の画法を穏健に取り入れて、19世紀後半のサロンで好評を博した画家である。彼の絵画の特徴は、アトリエで描いたモデルを画面上で戸外に配し、寓意的ないし詩的な題名を添える、というものである。
 分け隔てのない親しみやすい人柄の彼のアトリエには、外国から多くの画学生が集まり、日本人でも黒田清輝、久米桂一郎、岡田三郎助、その弟子の世代である山下新太郎、和田英作などが学んだ。彼らは印象派以後の「第二の革新」をコランら「外光派」に見いだし、積極的にその画法を取得して帰国後の作品に結実させた。コランの絵画には、明治中期の洋画の源流を見ることができよう。
(神山亮子「作品解説」『府中市美術館所蔵作品50選』2000年、府中市美術館)

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