少女群舞

作者青木繁
ArtistAOKI Shigeru
TitleDancing Girls
制作時期明治37年(1904)
技法・材質板、油彩
サイズ10.2cm×14.7cm
署名等画面左下:S.A.
取得方法購入
取得年度平成8年度
コレクション名河野コレクション
所蔵品目録番号0025
作品解説陽光の中を赤い袴をはいた少女たちが輪をつくるように駆けていく。左から右へとほとんど水平に風にたなびく赤いリボンと着物と長い黒髪。草原の緑、背景の黄色、少女たちの赤のシンプルな色彩対比が眼にまぶしく美しい。板に描かれた小品だが、生き生きとした少女たちの歓声が聞こえてくるような、彼女たちの青春の一瞬が画面に塗り込められて、永遠に定着されてしまったかのような印象を残す。明治後半期の浪漫主義絵画を代表する天才画家、青木繁の傑作の一つである。
 彼と同じ久留米市出身の詩人、高島宇朗(泉郷)の回想によると、青木は「今、関口の滝の近くで、可なり烈しく吹きまくる風の中を、嬉々として快走し去る学校帰りの少女達を見たので、描いて来ました。……よく出来ました。」と嬉しそうに高島に語ったそうである。このとき青木は21歳の東京美術学校生。9月の第8回白馬会展に《黄泉比良坂》などを出品して初代白馬会賞を受賞、熊谷守一、森田恒友、正宗得三郎、坂本繁二郎などと交流していた時期にあたる。彼らは「青木グループ」と呼ばれ、新宿曙町の青木の下宿に集まっていた。高島宇朗もたまたま同じ曙町に下宿していたことから、この時期頻繁に交遊していたものと思われる。有名な《自画像》《享楽》《天平時代》《海》《海の幸》など多くの名作が描かれたのが、やはりこの時期にあたる。
 この作品は、青木が人生の高揚期に一瞬の青春を捉えた、小さな宝石のようなタブローである。
(山村仁志「作品解説」『府中市美術館所蔵作品50選』2000年、府中市美術館)

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