Animal 2018-01

作者三沢厚彦
ArtistMISAWA Atsuhiko
TitleAnimal 2018-01
制作時期平成30年(2018)
技法・材質樟、油彩
サイズ高さ234.0cm×幅127.5cm×奥行203.0cm
取得方法購入
取得年度令和5年度
所蔵品目録番号2678
作品解説角2本を額の上から垂直に伸ばし、背中から羽根を左右に広げる、白毛の獣です。眉毛や髭、たてがみそして羽はリズミカルに形づくられ、鱗の塊のような力強い尻尾がアクセントを添えています。愛嬌のある目と不敵な口元が、とても魅力的です。そして背中に、親しみに満ちた姿とは対照的な、獰猛な肉食獣の顔面が隠されていることを知ると、その複雑なありように一層愛着を感じるのではないでしょうか。
 作者の三沢厚彦さんは、現代の動物表現を牽引する彫刻家です。伝統技術につらなる木彫を土台に、油絵具で鮮やかに着彩した、軽妙かつ確かな存在感をもつ動物彫刻で広く知られます。京都に生まれ育った三沢さんは、東京藝術大学で彫刻を学んだ後(1989年大学院修了)、2000年から今に連なる<アニマルズ>シリーズの発表を始めました。2007年からは、<アニマルズ>を集めた展覧会が全国で開催され、人気を博します。この展覧会は、ゲスト作家との共同制作や公開制作などが加わり、また新作が随時登場するなどしてその内容を変化させ、今に続いています。本作もすぐに展覧会の常連となりましたので、見かけた方も多いのではないでしょうか。
 タイトルは《Animal 2018-01》で、制作順に機械的に付けられており、三沢さんはふだんは「麒麟」と呼んでいます。麒麟とは中国古代の想像上の動物で、竜、鳳凰、亀とともに四霊獣のひとつとされます。その姿は実は特に定まっていないようで、おおよそ鹿に似た一角獣で、顔は龍のようで牛の尾と馬の蹄(ひづめ)を持っています。本作は2本の角と翼によって、麒麟であることを示しています。しかしながら、背に埋め込まれた獣といい、太く大きな尻尾といい、従来の麒麟のイメージをはるかに超えた想像力が、多様な動物を引き寄せ合成させた怪物を誕生させています。
 この怪物は、目の色が左右で異なり(右が水色、左がエメラルドグリーン)、口角の上がり具合や、眉毛の流れ、肩の張りなども非対称をしています。左右に移動して見て初めて、これらの違いを確認することができるのです。私たちは、堂々と立つ麒麟の姿に時間の経過を読み取り、また豊かな表情に畏れと親しみを抱きます。時間を超える古典的な芯と、今この瞬間の感情を共有できる現代性をあわせ持つ、稀有な作品です。
(神山亮子「所蔵品から」『府中市美術館だより』第59号、2024年3月、府中市美術館)

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