舞子
| 作者 | 中沢弘光 |
|---|---|
| Artist | NAKAZAWA Hiromitsu |
| Title | Maiko |
| 制作時期 | 制作年不詳 |
| 技法・材質 | キャンバス、油彩 |
| サイズ | 44.2cm×32.0cm |
| 署名等 | 画面左下:Hiromitsu Nakazawa |
| 取得方法 | 購入 |
| 取得年度 | 平成9年度 |
| 所蔵品目録番号 | 0167 |
| 作品解説 | 画家は、舞子が振り返るように正面に向けた顔の、一瞬の表情を捉えた。頼りなげな体つきに反して、全てを見通しているような視線は、この女性の生い立ちや内面へのさまざまな想像を、見る者の心に引き起こす。表面の華やかさからは測りきれない謎めいた雰囲気が、この作品の魅力を増している。 さわやかな風に乗って外から入り込んだ光が、顔に、衣装に反射して眼にとりどりに飛び込む過程が、多様な色によって再現されている。例えば影には紫や緑が用いられ、同じ色が着物や半襟、髪飾りにも繰り返し現われる。輪郭はあいまいで、速い筆使いで、軽やかに描かれている。 中沢は明治29年(1896)に東京美術学校西洋画科に入学して黒田清輝に師事し、また白馬会の創立に参加、以後同展に出品を続けた。同43年の第3回文展で《おもいで》が二等を受賞し、この年より文展審査員をつとめている。同45年に光風会、翌年に日本水彩画会を結成するなど、画壇で重鎮として活躍した。宗教や古典に画題を求め、女性像を数多く描いている。本作は、師黒田の外光表現をよく吸収した、明るい光に満ちた画面に仕上がっており、明治後期に描かれたと考えられる。 背後の木の桟の奥には草むらと水面が見え、京都の鴨川らしき風情が感じ取れる。実際中沢は、明治30年代より京都の情景や舞子を多く取材し、桟ごしに水辺や対岸が見渡せる室内にたたずむ舞子を、何点も描いている。 (神山亮子「作品解説」『府中市美術館所蔵作品50選』2000年、府中市美術館) |
