カスベ遊歩

作者高森明
ArtistTAKAMORI Akira
TitleRay, Promenading
制作時期昭和46年(1971)
技法・材質キャンバス、油彩
サイズ131.0cm×162.0cm
署名等画面右下:1971 TAKAMORI
取得方法高森明氏寄贈
取得年度平成26年度
所蔵品目録番号1839
作品解説高森明は昭和4年(1929)函館市の魚屋の三男として生まれ、高校卒業後に上京、現在の武蔵野美術大学と多摩美術大学に学びました。大学時代から約70年間ずっと府中市に暮らし、独立美術協会展などに出品を重ねてきた画家です。
 「カスベ」とは、北海道で魚のエイを指す言葉です。干物にして、そのまま炙ったり、煮付けにしたりして食用にします。高森は実家から送られてきたカスベの干物の形の面白さに惹かれ、多くの作品に描きました。
 実物の写真と見比べてみると、平べったい体のシワ、尖った尾びれなど、特徴的な形態がしっかりとスケッチされています。しかし青や紫、黄色など優しい色で彩られた体は最早干物には見えず、片目を見開き、マントをまとって浮遊する、奇怪な生物の姿に変えられています。傍の烏も、猟師に捕らわれた獲物のようにだらりと脚を下に垂らしながら、ぎょろりとした眼がカスベの方を見つめます。絵具はキャンバスの下描きが見えるほどの薄塗りで、まるで内部から青白い光を放っているような、不思議な質感をたたえています。
 目の前の卑近な魚をモチーフとすることで生まれた、幻想性と現実感とが混ざり合った魅力的な作品です。柔らかな光に満たされた空間の中で、カスベは永遠の命を持ってこちらを見つめ続けています。
(小林真結「所蔵品から」『府中市美術館だより』第46号、2017年7月、府中市美術館)

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