四国路
| 作者 | 宮本十久一 |
|---|---|
| Artist | MIYAMOTO Tokuichi |
| Title | Pilgrimage through Shikoku |
| 制作時期 | 大正9年(1920) |
| 技法・材質 | 絹本著色 一幅 |
| サイズ | 112.6cm×68.0cm |
| 署名等 | 画面右下:十久一 (白文印)美也毛止 |
| 取得方法 | 購入 |
| 取得年度 | 平成8年度 |
| 所蔵品目録番号 | 0017 |
| 作品解説 | 宮本十久一は、明治34年(1901)、東京・本郷の乾物商の家に生まれた。川端画学校在学中の大正9年(1920)に四国へ渡り、一ヵ月の巡礼を体験した。帰宅後、ひたすら自室に籠り描いたのが、本作品である。中学生の時に鏑木清方に自作の批評を乞い、あるいは吉川霊華の元に出入りをしていた十久一であったが、画家としての眼は、社会の生々しい現実へと向けられていた。 編笠を被り、松葉杖を支えに四国八十八ヵ所を巡る、遍路の姿である。右手には握りにくそうに金剛鈴をつかむ。みる者へ向けられた視線は、無気力でいて刺さるように鋭い。同年の第1回中央美術展に出品した作品で、青年十久一の意欲が画面に溢れている。画稿も残されているが、背景には阿波の土柱の風景が不気味な様子に描かれ、遍路の姿も本画以上に切実である。 十久一は、関東大震災の後に府中へ移り、教壇に立ちながら生涯制作を続けた。同じくこの地域で活動していた倉田三郎や松村健三郎らとも交流があった。霊華の没後は小室翠雲に師事し、画風は一変して墨画が主体となる。しかし、時に直情的とも感じられるようなその奔放な筆触のなかに、この画家の一貫した強い感情を看取することができる。 なお、十久一の生涯は、宮本雅弘『風狂の旅人 ある無名画家の隠された青春』(河出書房新社 平成6年)によって詳しく知ることができる。 (金子信久「作品解説」『府中市美術館所蔵作品50選』2000年、府中市美術館) |
