千円札印刷作品(4タイプ)
| 作者 | 赤瀬川原平 |
|---|---|
| Artist | AKASEGAWA Genpei |
| Title | Thousand-Yen Bill (4 Types) |
| 制作時期 | 昭和38年(1963) |
| 技法・材質 | 紙、活版印刷 |
| サイズ | Ⅰ17.5×16.0cm(表裏印刷のライトグリーン)/Ⅱ 7.5×85.5cm(5枚つづり)/Ⅲ 29.0×19.5cm(台紙に3枚)/Ⅳ 7.5×16.0cm(1枚もの) |
| 取得方法 | 購入 |
| 取得年度 | 平成21年度 |
| 所蔵品目録番号 | 1763 |
| 作品解説 | ネオ・ダダイズム・オルガナイザーズやハイレッド・センターといった前衛美術グループヘの参加(1950年代末から60年代初め)、パロディ・ジャーナリズム《櫻画報》の執筆(70年代)、尾辻克彦名による短編『父が消えた』で第84回芥川賞を受賞(81年)、勅使河原宏監督の映画『利休』の脚本執筆(89年公開)、老化現象をプラスに捉え直した「老人力」の提唱(98年単行本刊行)などなど。赤瀬川原平(1937-2014)は、前衛芸術、戯画、漫画、出版、文学、映画、写真と、実に多方面に渡って活動を続けました。 当館が所蔵する《模型千円札》は、赤瀬川が美術家として活動していた1963年に制作発表した一連の作品です。千円札を緑色原寸大で印刷し、個展案内状としたもの(Ⅰ)、印刷所のミスで横につながった形状(Ⅱ)、3枚が一枚の紙に刷られた形状(Ⅲ)があり、さらに墨一色で印刷され切り抜かれたもの(Ⅳ)の4種類が存在します。赤瀬川は、これらをパネルに貼って構成したり、ラジオなどの日用品を包んで梱包作品を作ったりしました。同時期に、千円札の拡大模写も制作、当時若手前衛美術家たちの牙城であった読売アンデパンダンの第15回展に出品しています(《復讐の形態学(殺す前に相手をよく見る)》63年 90×180cm 名古屋市美術館蔵)。 1964年に、原寸大の千円札作品が贋札事件として捜査を受け、翌年に通貨及証券模造取締法違反に問われて起訴されました。《模型千円札》は片面に一色で印刷されただけで、およそ偽札としての機能を果たすとは思われません。実際、起訴容疑も、紙幣に紛らわしい外観を持つものを模造した点においてで、交換価値を有する紙幣という国家の信用経済のシステムを混乱させる意図が疑われたことが、この事件の原因のひとつと考えられます。 裁判は、評論家である瀧口修造らが特別弁護人となり、ハイレッド・センターの仲間など美術家たちが証言台に立つなど、美術界が一丸となって弁護をしました。しかしながら有罪判決が下され、最終的には1970年に最高裁判所で上告が棄却されました。本作品は、戦後最大の芸術裁判の証拠品、裁判の過程で交わされた芸術論の象徴として、今も強い存在感を放っていると言えるでしょう。 (神山亮子「所蔵品から」『府中市美術館だより』第41号、2015年2月、府中市美術館) |
