Kabukicho2

作者元田久治
ArtistMOTODA Hisaharu
TitleKabukicho 2
制作時期平成16年(2004)
技法・材質紙、石版
サイズ60.6cm×47.8cm
署名等画面外:1/10 Motoda
取得方法寺田小太郎氏寄贈
取得年度平成20年度
コレクション名寺田コレクション
所蔵品目録番号1745
作品解説地震による崩壊か、それとも空爆による人為的破壊か。廃墟と化した街路や建物。中央にまっすぐ伸びた道の両側には、小さなビルが建ち並び、飲食店や風俗店の看板がひしめく。この場所を一度でも訪れたことがあるなら、ここが東京最大の歓楽街、歌舞伎町の街並みだということはすぐに気づくはずだ。描かれているのは歌舞伎町一番街、南を向いて靖国通りを望んだ光景である。近年海外からの観光客も多いこの街は、日本のある面を象徴するスポットでもある。
 作者の元田久治(1973-)は、現代における都市のランドマークを、あたかも実在するかのような廃墟の風景として、克明なリトグラフに制作してきた。ほかに、浅草雷門や銀座四丁目交差点を描いた作品も、当館では収蔵している。それらに共通するのは、画中に人影がないことだ。かつていたはずの人々はどこにいったのだろう。みんな街を棄てて逃げてしまったのだろうか、それとも疫病で死滅してしまったのだろうか。
 筆者はこの文章を2012年に書いている。日本の読者ならば、この作品を見たとき、前年に起きた「3.11」、東日本大震災のことを思い出さずにはおかないだろう。しかし、この作品は「3.11」よりも、6年前に描かれたものだ。
 作者は今回の災害を予見していたかに思えるとともに、これから東京に襲いかかるかもしれない巨大地震とその結末を幻視しているようにもみえる。
 作者は、「今回の震災によりフィクションがノンフィクションになリ、遥かに想像を超えてしまっている厳然たる事実にはただ呆然とするばかりだった」(『NEO RUINS 元田久治作品集』エディシオン・トレヴィル、2011年)と述べている。ときとして芸術は、来るべき出来事の予兆となる。そう考えると、この作品は私たちに重大な警告を発しているようにも受けとれるのだ。本作は、初期シリーズ《Revelation》(啓示・黙示を意昧する)の一作である。私たちの想像力を試すかのように、闇は沈黙している。
(武居利史「所蔵品から」『府中市美術館だより』第36号、2012年10月、府中市美術館)

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