溶解・身体 No.3

作者宇佐美圭司
ArtistUSAMI keiji
TitleDissolution, the Body: No.3
制作時期昭和39年(1964)
技法・材質キャンバス、油彩
サイズ185.0cm×270.0cm
取得方法購入
取得年度平成17年度
所蔵品目録番号1180
作品解説大阪と和歌山で育った宇佐美圭司(1940年生まれ)は、1958年、高校卒業と同時に上京し、2年後には国立市に居を定めました。大学で学ぶ代わりに、独自に制作と思索を重ね、早くも1963年23歳の時に、当時日米の前衛美術を意欲的に紹介していた南画廊で、初個展を開きます。出品作は、画面全体を埋める有機的な形を、白色で塗り込めていく抽象画でした。ですが、すぐに翌年から、表面の白をはがしていくかのように、画面に色と形が復活します。
 《溶解・身体No.3》は、この時期の作品です。それまでと同じく格子状の線が画面を区切ってはいますが、1区画は広がり、そこからはみ出すように、白、赤、グレー、黄色、そして基調となる青を用いて描いた斜め方向の、ふくよかな形が見出せます。どうやら、身体のようです。肩から指先、背中から腰、腰からくるぶしにかけてのライン。途切れがちながらも、しっかりと、人の体の形が画面にひかれています。しなやかに伸びた手足は、どこか生命力を宿しています。白の絵画という極限にたどり着いた後で、宇佐美圭司が画面に取り戻した主題は、身体を通して象徴される「人間」でした。
 その後宇佐美圭司は、雑誌記事の中から、「人間のおかれた状況をもっとも集約的にあらわしている」4つの人型を取り出し、1966年から画面に登場させます。《溶解・身体No.3》では分断されていた身体が、その存在を集約した「型」なって概念化されたのです。以後、2012年に亡くなる直前まで、この4つの人型が用いられました。最後の大作は600号(29l×582cm)ものサイズで、《制動(ブレーキ)・大洪水》と題されています(セゾン現代美術館蔵)。茶褐色で塗り分けられた人型が画面中に幾重もの反響を生み出し、その壮麗な躍動感が観る者を強く突き動かします。
 《溶解・身体No.3》は、宇佐美圭司が生涯のテーマを見出すまでの、逡巡と確信の跡が強く刻まれた作品です。
(神山亮子「所蔵品から」『府中市美術館だより』第39号、2014年2月、府中市美術館)

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