作品

作者村上三郎
ArtistMURAKAMI Saburo
TitleWork
制作時期昭和38年(1963)
技法・材質綿布、板、VB塗料、石膏、ボンド
サイズ181.5㎝×137.5㎝
取得方法購入
取得年度平成15年度
所蔵品目録番号1050
作品解説1925年(大正14)神戸市に生まれた村上三郎は、戦争の学徒動員を挟んで1948年(昭和23)に関西学院大学哲学科を卒業。その後は美術教師をしながら油絵の制作を続け、新制作協会の若手が集まって結成された「0会」を経て、具体美術協会に参加します。
 具体美術協会とは、1954年(昭和29)に大阪で、画家・吉原治良を中心に結成された団体です。吉原の「人のまねをするな」「今までにないものをつくれ」という指導のもと、会員たちは既存の概念にとらわれない自由な発想で、新しい表現を次々と試していきました。
 1955年に会員となった村上は、「第1回具体美術展」(小原会館、東京)に、彼の代名詞となる作品、通称「紙破り」を発表します。木枠にハトロン紙を太鼓張りにし、作家自身が体当たりして突き破るという公開制作を行い、終了後作品として展示したのです。
 パフォーマンスとしての「紙破り」は同時に、伝統的な画材を使わないことで伝統的絵画へのアンチテーゼを示した絵画作品、と捉えることもできます。村上は1950年代末に向かって、絵画制作に集中していきます。その頃の作品は、筆の跡も生々しく、絵の具を塗りたくった画面が特徴です。絵の具の形や表情から、それをつけた画家の身体の動きが感じとれます。
 表紙の《作品》は、村上三郎にとって最初の個展に出品されました(1963年、グタイピナコテカ、大阪)。画面の大部分には黄緑色の塗料が、激しい筆致で塗られています。紡錘形がうっすらと浮かびあがり、穴が空いているようにも見えます。それに劇的な対照をなすのが、左上の出っ張りです。木材を四角く組み合わせ、赤と青の塗料をたっぷりと盛っています。塗料は盛り上がったまま固まり、木の枠にこびりつき、重みで落ちそうなくらいです。遠くからですと青で縁取りされた四角い赤い面が見えるだけですが、近づくと、厚く盛られた絵の具の物質感が迫ってきます。
 ここでは画面に置かれた物質と、画面に現れるイメージとの対比が強調されています。制作プロセスや身体の痕跡をストレートにぶつけるのではなく、画面に対比関係を作り、その関係性を観客に伝えようとする意図が働いています。痕跡から構成へと、村上三郎の関心が移ったことがわかります。
 1960年代を通して村上三郎は自分の表現を見直し、1971年(昭和46)には、絵画と決別するかのような、木箱を使った作品を発表します。1980〜90年代は、国内外の展覧会に参加して具体美術協会の活動を紹介し、その世界的な評価の形成に寄与しました。
(神山亮子「所蔵品から」『府中市美術館だより』第23号、2008年3月、府中市美術館)

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