チャイルド洋食店

作者清水登之
ArtistSHIMIZU Toshi
TitleChilds Restaurant
制作時期大正13年(1924)
技法・材質キャンバス、油彩
サイズ91.3cm×76.0cm
署名等画面左下:TOSHI. SHIMIZU 1923
取得方法購入
取得年度平成7年度
コレクション名河野コレクション
所蔵品目録番号0145
作品解説栃木県出身の清水登之は、20歳で単身アメリカに渡って各地を労働者として転々とした。シアトルではフォッコ・タダマの画塾に入り画家への道を歩み始めるが、後にニューヨークに移ってアート・ステューデンツ・リーグに入り、ジョン・スローンなどに師事した。清水は一時帰国してから再渡米し、ニューヨークで制作している。本作はアメリカ滞在の最後を飾る秀作の一つである。
 作品の年記には「1923」とあるが、日記によると実際に完成したのは翌年2月らしい。作品は、3月のニューヨークの第8回インデペンデント展に出品され、同年パリに渡って10月のサロン・ドートンヌにも出品されている。清水は、ヨーロッパを巡って帰国し、日本でも名声を高めた。その後、独立美術協会の創立に加わり、晩年は吉祥寺で暮らしている。
 画面上方に「Childs」の白い文字が浮かび、右下では子どもが手を当てて、焼けるパンケーキに見とれている。外側からガラスごしに店を覗いている構図だ。ウェイトレスが忙しそうに立ち働き、奥にはコックやレジの男の姿がみえる。店内は老若男女の客でにぎわっている。素朴で単純化された造形とともに、店員の制服、客のコートやドレスが華やかな色彩の響きあいをみせ、モダンな都会生活の一瞬をいきいきと再現する。日記にも「全体ノ色彩配列ヲ音楽的ニシタ 色彩配列ノ面白味ハ充分アル」とあり、画家も色彩の効果には苦心したようだ。
 日記によれば、チャイルド洋食店は、実際にタイムズ社の向い側にあったらしく、タイムズスクエアまで研究のために繰り返し出かけたことが記されている。第一次大戦後の不況をのりこえて好景気に入っていた時期で、酷寒のマンハッタンでも庶民の懐には暖かさが戻ってきていた。活気づく店内の様子に、そんな世情すらうかがわせる清水の代表的作品である。
(武居利史「作品解説」『府中市美術館所蔵作品50選』2000年、府中市美術館)

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