WORKⅡ(4)Work86-4
| 作者 | 郭仁植 |
|---|---|
| Artist | Quac Insik |
| Title | WORKⅡ(4)Work86-4 |
| 制作時期 | 昭和62年(1987) |
| 技法・材質 | 紙、銅版 |
| サイズ | 55.5cm×55.5cm |
| 署名等 | 画面外:Work86-4 26/50 QuAc, |
| 取得方法 | 購入 |
| 取得年度 | 平成10年度 |
| 所蔵品目録番号 | 0901-4 |
| 作品解説 | 何重にも積み重ねられた色彩の斑点。さまざまな薄い色の楕円が透明で複雑な層になって、画面に奥行きをつくっている。和紙に染み込んでひとつになった色インクの極端に細かな粒子。あたかも和紙の内側に光りがあって、紙という素材自体が輝いているように見える。顕微鏡で、透明なプレパラートに挟まれた緑色の細胞組織でも覗いているかのような、鮮明な緑色が印象的な作品である。実際、どこか生き物のように水気を含んだ運動感と浮遊感がある。 郭仁植は、大正8年(1919)韓国に生まれ、昭和12年(1937)から日本に移住して日本美術学校に学び、戦前は独立展に出品、戦後は二科展や美術文化協会や読売アンデパンダンに参加した後、主に個展を中心に発表し続けたキャリアの長い画家である。多摩川近くの稲城市坂浜に在住し、平昭和63年3月肺癌のため68歳の生涯を閉じた。1980年代に入って韓国の国立現代美術館に主要な作品が収蔵され、大規模な回顧展が開かれ、「もの派」の先駆者として、ようやく世界的にも再評価されはじめた。この《WORK 86-4》は最晩年の仕事となる。 技法的には、アクアチントの一種であるスピットバイトという方法を使っている。銅板に直に、非常に細かな松ヤニの粒をいくつもの点に蒔き、筆に直接硝酸を含ませて楕円状に腐食させる。硝酸の量、腐食時間の長さにより楕円の濃淡が異なる。楕円相互の重なりと和紙の質感に対する、作家の鋭敏な感覚と徹底したこだわりが加わっているからこそ、この独特の深みが生まれるのである。 (山村仁志「作品解説」『府中市美術館所蔵作品50選』2000年、府中市美術館) |
