| 公開解説 | 【極東書店カタログKF-1999a記載内容/「クーベルタンのオリンピズムー教育・科学・芸術ー」\5,000,000(税込)/ ピエール・ド・クーベルタン(Baron de Coubertin, Charles Pierre de Frédy. 1863- 1937)が 1892 年にソルボンヌ大学にて彼のオリンピズムに基づいて古代オリンピックの復活を提唱したとき、それは単にスポーツのイベントの復活を目指したものではありませんでした。クーベルタンの提唱するオリンピズムは、ギリシア古典主義と英国パブリック・スクールの教育を理想とし、スポーツによる精神と肉体の調和のとれた教育、社会性や倫理性の育成、肉体と芸術的センスの統合、社会改良から平和主義の構築までも射程に含む広範な概念でした。現在、国際オリンピック委員会によるオリンピズムの根本原則を概観しても、教育的、平和主義的、倫理的、芸術的要素を含むやはり多義的な概念として規定されています。/本コレクション『クーベルタンのオリンピズム-教育・科学・芸術-』は、まさにオリンピズムの理解を辿る内容となっております。/コレクションの明細を見ていくと、クーベルタンの肉筆手紙、一次資料、関連資料、研究文献を揃えて、改めてスポーツだけに限定されない彼の社会や教育に関する思想を概観します(No.1-7)。オリンピズムを体現したオリンピック競技を辿るという点では、1906 年アテネ中間大会の大会記録集、公式記念アルバム及び関連資料が特筆に値します(No. 8-11)。この大会は公式の記録としては削除された幻の大会であり、資料としての希少性以上に、オリンピック黎明期におけるオリンピズムに関する研究上の空白を埋める上で重要なものであると言えます。また同じく幻の大会として知られている 1940 年東京オリンピックは日中戦争の激化により返上を余儀なくされますが、1940 年東京オリンピック組織委員会のバッジ(No.18)は、オリンピズムの平和的要素を逆説的に考察する上で不可欠といえます。オリンピズムの現実世界への意義や遺産を考察するという点で注目すべきものは、道吉剛旧蔵東京オリンピックのデザインコレクション(No.29)です。道吉剛は大会組織委員会デザイン室にてピクトグラムの制作に関わりますが、これは言語によるコミュニケーション手段を取らなくても内容を理解できる絵文字記号として考案されたものです。この 1964 年東京オリンピックで誕生したピクトグラムは、競技を終えた後も日本及び世界でも利用されているオリンピックのレガシーといえるものです。創作芸術による世界共通理解の形成は、まさにクーベルタンが理想としたオリンピズムのスポーツを超えて日常生活への実践を体現しているといえます。/本コレクションは多義的なオリンピズムを理解し、さらには今後の発展へと寄与することが期待できるものと言えます。】 |
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